『風、薫る』りんと直美が“看護とは何か”に再び向き合う “分からない”まま大事にすること

『風、薫る』りんと直美が考える“看護”とは

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第129話では、最終回を目前にして、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)がこれまで何度も考え続けてきた「看護とは何か」という問いに再び向き合う。

 シマケン(佐野晶哉)と話したりんは、直美に看護の実用書を作らないかと相談する。これまで自分たちは多くの人に助けられてきた。その恩を今度は後に続く人たちへ返していきたい。「リターン」と口にするりんが思い浮かべていたのは、看護婦になる前、那須で暮らしていた頃の自分や父のような人たちだった。

 看護の知識がもっと多くの人に届けば、助かる人もいるかもしれない。そして、これから看護婦を目指す人たちの役にも立つ。りんの話を聞いた直美は賛同し、「りんが書いてみたら?」と勧める。もちろん、自分も手伝うつもりだ。

 しかし、いざ書くとなると、りんには何を書けばいいのか分からない。すると直美は、初めて出会った頃のりんを「さっぱり分からなかった」と振り返る。りんも直美について、意地っ張りで「まったく分からなかった」と応戦。思えば2人は、出会った頃から分からないことだらけだった。

 それでも、「でもね……」と笑顔で顔を見合わせる2人がいい。考え方も性格も違い、何度もぶつかってきた。それでも一緒に患者を看て、困ったときには助け合い、気づけば誰よりも長く同じ道を歩いている。分からないからといって、共に歩めないわけでも、いつまでも分かり合えないわけでもない。そのことを、りんと直美自身が証明しているようにも見える。

 そこで直美は実用書の話を現実的にするため、柳生(中村倫也)のもとを訪れる。先日の振る舞いを謝り、これまでの礼を伝えた上で、今後も恵風看護婦会をよろしくお願いしたいと頭を下げる。

 「分からないところは分からないままで。大事にしていきたいんです、このご縁」。もっとも、直美は柳生の考えていることを完全に理解したわけではない。患者一人ひとりのために奔走する看護婦と、国全体を見ながら制度を考える役人。立場が違えば、見えているものも当然違う。以前の直美なら納得できない相手には真正面から食ってかかっていただろうが、今は「分からない」ことも含めて相手との関係を続けようとしている。

 その上で直美は、ようやく本題へ。りんが看護の実用書を書くことを伝え、関係各所に推薦してほしいと柳生に頼む。すると柳生の口から出てきたのが、「社会保険」という言葉だった。直美たちが続けてきた活動は、それに近いのだという。目の前で困っている患者をどうにかしたいと始めたことが、いつの間にかより多くの人を支える仕組みへとつながろうとしている。

 そして、りんが「看護とは何か」を考える上で大きなヒントをくれたのが、佳枝(相田翔子)だった。みかんの花が咲く季節。窓の外から聞こえてくる女学生たちの歌声に耳を傾けながら、佳枝は「この窓はいろんなものを運んでくれる」と話す。自分も昔、みかんの木の上でよく歌っていた。遠くの家まで声が届いたら、いいことがある。そんなふうに決めていたのだという。りんに「歌ってみてください」と促され、佳枝は少し戸惑いながらも、「一掛け二掛け三掛けて~」とわらべ歌を歌い始める。薬でも処置でもない。ただ、懐かしい歌を口ずさむ。それが今の佳枝に必要なことなら、それも看護になる。

 そこからりんが導き出したのが、看護とは「今そこにあるもの」だという考えだった。患者が困っていて、看護婦が必要だと思えば、それは食事かもしれないし、話を聞くことかもしれない。時には歌でもいい。最初から「これが看護」と決まっているのではなく、その人を前にして初めて必要なものが見えてくる。

 ところが直美は、「そこにいないと分からないなら、看護って分からないって言ってるのと同じじゃない?」と、いかにも直美らしい疑問をぶつける。

 確かにその通りである。実用書を書くのに、「その場にならないと分かりません」では身も蓋もない。しかし、りんは「分からないものは分からない」とすることこそ誠実なのだと考える。

 この日の2人は、看護について話しているはずなのに、気づけばずっと「分からない」ことについて話している。出会った頃は互いのことが分からなかった。直美は柳生の考えを今もすべて理解しているわけではない。そして、りんもまた、看護に絶対の正解があるとは考えていない。大切なのは、分からないからといってそこで終わらないことなのだろう。相手の話を聞き、その人が何を必要としているのかを考える。りんと直美は、そうやって一人ひとりの患者と向き合ってきた。

 では、「今そこにあるもの」を見つけるために、看護婦は実際に何をすればいいのか。最後にもう一つ残された問いの答えは、次回の最終話へ。りんと直美が長い年月をかけて探し続けてきた「看護」が、どんな形で締めくくられるのか見届けたい。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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