『ウィスパーマン』で描かれた“真の恐怖”とは ジャンル映画から見えてくる配信映画の課題も

『ウィスパーマン』で描かれた“真の恐怖”

 『アベンジャーズ』シリーズで知られるルッソ兄弟が製作した、Netflixの配信映画『ウィスパーマン』がリリースされた。そのタイトルから、もしかしたらヒーロー映画の新作なのかと思いきや、イギリスの作家アレックス・ノースの小説『囁き男』を原作にした、猟奇殺人の犯人を追うサスペンススリラー映画である。

 名優ロバート・デ・ニーロとマイケル・キートンをはじめ、ドラマシリーズ『セヴェランス』のアダム・スコット、『ミッション:インポッシブル』シリーズのミシェル・モナハンらが出演するという、豪華な俳優陣による本作『ウィスパーマン』なのだが、その出来には、やや厳しい声も囁かれている。ここでは、そんな本作の内容を検証しながら、そこで描かれた“真の恐怖”と、ジャンル映画の特徴から見えてくる配信映画の課題についても考えていきたい。

 アダム・スコットが演じるトムは、妻を亡くして8歳の息子ジェイク(アクストン・ルカ・ポルト)と暮らしている犯罪小説家だ。ある日、最愛の息子が誘拐されてしまったことで、彼は疎遠になっていた父親ピート(ロバート・デ・ニーロ)に助けを求める。ピートは、退職した元刑事だったのである。ピートは現役の刑事アマンダ(ミシェル・モナハン)と協力しながら、犯人へと近づいていく。

 そこで見えてくるのが、数十年前に「ウィスパーマン」として知られた、少年をターゲットとした連続殺人事件の犯人との関連性だ。その手口は、殺害する前に囁くような声で被害少年と会話をし、音声を採録するという猟奇的なもの。しかしなぜ、そうした犯行がいまになってまた始まったのか。ピートとアマンダは手がかりを掴むために、ある収監されている人物(マイケル・キートン)に会いにいく。

 興味深いのは、本作がとくに1990年代のサイコスリラー映画を思い起こさせる内容であるということだ。『羊たちの沈黙』(1991年)、『セブン』(1995年)、『コピーキャット』(1995年)、『CURE』(1997年)……。本作を監督した1978年生まれのジェームズ・アッシュクロフトにしてみれば、多感な時代に鑑賞してきたこれらの作品の影響が、本作に反映されているだろうことは想像に難くない。

 主人公が猟奇的な殺人事件に立ち向かい、狂気の内面世界と対峙する……。そうした主人公に感情移入しながら、彼らが経験する恐怖をお化け屋敷的な体験として楽しむというのが、『羊たちの沈黙』が決定づけた、この時代のサイコスリラーのトレンドだったといえよう。もちろん、『ありふれた事件』(1992年)や『アメリカン・サイコ』(2000年)など、そういった流れに収まらない作品もあったのだが。

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