“6のつく年”のクレしん映画なのに怖くない? 『オラの妖怪バケ~ション』妖怪描写を紐解く

妖怪の国で待っているのは、「恐怖」だけでない
もちろん、本作にも危機はある。ひろしとみさえは妖怪に「おしりだま」を奪われてしまう。「おしりだま」とは、妖怪が人間であるために必要なもので、それを奪われたひろしとみさえは妖怪の姿になり、さらに人間だったころの記憶まで失っていくことになってしまう。
家族の姿が変わり、記憶まで失ってしまうという展開だけを考えれば、過去の「6のつく年」の作品にあってもおかしくない怖さだ。
それでも、私はこの場面を過去作と同じような「恐怖」とは感じなかった。
その理由は、しんのすけが妖怪の国から逃げるのではなく、ひろしとみさえを元に戻すために、その世界の中へ進んでいくからだ。そして、そこで出会った妖怪たちも、しんのすけに力を貸してくれる。
ここで気づいたのは、「怖いもの」と「知らないもの」は同じではないということだった。
妖怪は、人間にとって未知の存在だからこそ、最初は不気味に見える。しかし、しんのすけが妖怪たちと行動し、その性格を知っていくにつれて、その見え方は変わっていく。本作では、未知であることそのものが恐怖につながるのではなく、未知のものを知っていく過程が、冒険として描かれているのだと思う。
「いつもの世界が怖くなる」から、「いつもの世界の外へ」
「6のつく年だから、今回も怖いのではないか」。
そんな期待を持って観たからこそ、妖怪たちと出会い、その世界を知っていく物語だったことが印象に残った。
過去の「6のつく年」の作品が、知っているものを怖いものへと変えてきたのに対し、本作では知らないものと出会い、その世界を知っていくことが物語を動かしている。
同じ「6のつく年」で、「妖怪」という恐ろしげな題材を扱いながら、恐怖ではなく冒険として描いた。その違いこそが、私が『奇々怪々!オラの妖怪バケ〜ション』を面白いと感じた理由なのだと思う。
■公開情報
『映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション』
全国公開中
声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ
声の特別出演:伊藤沙莉、阪本(マユリカ)、中谷(マユリカ)
原作:臼井儀人(らくだ社)、『まんがクレヨンしんちゃん.com』(双葉社)連載中
監督:渡辺正樹
脚本:中村能子
主題歌:TOMOO「大人になったら」(IRORI Records/PONY CANYON)
製作:シンエイ動画、テレビ朝日、ADKエモーションズ、双葉社
配給:東宝
©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2026
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