『VIVANT』AIハヤトになぜ賛否? “乃木”堺雅人の“第3の人格”ともいえる存在の特殊性

『VIVANT』Ai描写になぜ賛否?

 待望の『VIVANT』(TBS系)第2シーズンは、公安の野崎(阿部寛)の裏切りが発覚。国境を越えて陰の組織が正体を現し、黒須(松坂桃李)たち囚われの別班員の運命に注目が集まる。3年ぶりの新作は時系列的に第1シーズンの続編であり、ファンの期待を裏切らない仕上がりとなった。基本的に前作を踏襲しているが明確な違いもある。それはAIハヤト(声:高山みなみ)の存在だ。

 ハヤトは防衛省地下の旧大本営地下壕に位置する別班の司令室に設置されたスーパーコンピューターである。高度な演算能力を持つハヤトは、世界中の防犯カメラ映像や衛星の画像解析、通信履歴や公開情報の照合を瞬時に行い、捜査員の意思決定を支援する。ハヤトは、防衛・諜報・戦術分析に最適化した超高度なドメイン特化型エージェントといえるだろう。

 そのハヤトだが、実は第1シーズンから存在していた。乃木(堺雅人)が黒須たち別班員を狙撃した国際テロ組織「テント」への潜入作戦では、別班司令・櫻井(キムラ緑子)の指示によって情報漏洩を防ぐために作戦から外された。これはハヤトが所属組織の上長の命令に逆らえないためで、これまでも乃木たちの任務を後方支援していたと考えられる。

 高い知能を有するAIを登場させるメリットとして、情報の整理と圧縮が挙げられる。単調な説明台詞をAIとの対話に変換することで、刻々と移り変わる情勢やデータの処理過程を可視化し、リズミカルに提示できる。ハヤトの部屋はLEDモニターで囲んだセットを使用し、リアルタイムで映像を出力して撮影が行われており、没入感を高める工夫がされている。

 ハヤトの吹替は『名探偵コナン』の高山みなみが担当。アバターの姿で親近感を抱かせることで、有能な相棒であることが印象付けられる。映画やドラマで、AIないし高性能なコンピューターが主人公をアシストする例は以前からあった。有名どころでは『アイアンマン』の「J.A.R.V.I.S.」が、電脳執事としてトニー・スターク(ロバート・ダウニー・Jr.)を強力にサポート。このAIに『007』シリーズのベン・ウィショー演じる「Q」のように、特殊任務と諜報活動に特化したのがAIハヤトと言っていいだろう。

 ハヤトの特殊性はその成り立ちに起因する。ハヤトという名前が乃木の少年時代の通名「丹後隼人」に由来するように、ハヤトは乃木の別人格「F」の心理モデルをベースにしている。乃木の中に同居するFと違って、ハヤトは独立した自我や感情、プライドを持つ。いわば第3の人格の位置づけだ。「人間らしさ」を備えたハヤトは完全無欠ではなく、ときにはミスも犯す。機械でありながら別班員の存在感を凌駕するハヤトに違和感を覚える視聴者もいるようだが、生身の人間の属性が透けて見えることへの幻滅があるかもしれない。

 第11話で、ハヤトは別班員の情報を売ったのが新庄(竜星涼)と判定するが、後に誤りだと発覚する。AIの裏をかいた野崎をほめるべきだが、誤作動あるいはエラーを惹起するキャラクターが、乃木のオルターエゴとしての立ち位置と相まって、『2001年宇宙の旅』のHAL 9000のように人間に反旗を翻し、新たな火種となる可能性も考えられる。

 架空の組織である別班を扱う今作だが、現実世界でも諜報・防衛分野でAIは活用されている。ウクライナ戦線やイスラエル国防軍では、リアルタイムな敵の所在や拠点を推論するAIシステムが用いられているほか、アメリカ国家地理空間情報局の「Project Maven」にはCIAも密接に関与する。これらにはパランティア・テクノロジーズ社(Palantir Technologies Inc.)など、民間のデータ解析プラットフォームを提供する企業が参画している。

 『VIVANT』におけるAIの活躍は、外交・軍事におけるテクノロジー環境を反映したと見ることが可能だ。また、AIの高度化にともない、ハッカーが担う戦略的な役割は増大している。第2シーズンで“ブルー・ウォーカー”太田梨歩(花岡すみれ)の登場シーンが増加しているのは、その象徴といえるだろう。

 空想の産物だったAIが現実の生活に浸透しつつある現在、ドラマでのAIの描かれ方に変化が生じるのは当然だ。『VIVANT』が基盤にしているのは「友か敵か」の世界観である。AIが最終的にもたらすのは希望にあふれた社会か、あるいは人間を脅かす災厄なのか。AIが切り開く作品の行く末に注目したい。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、内野謙太、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、井上順、林遣都、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、宮下今日子、Tanapak Jongjaiphar、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
公式TikTok:vivant_tbs

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