“作画アニメ”の条件とは? 『上伊那ぼたん』と『とんがり帽子のアトリエ』を比較分析

『上伊那ぼたん』『とんがり帽子』の作画分析

今期作画がいいと呼ばれる2作品

 『とんがり帽子のアトリエ』(以下、『とんがり帽子』)と『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』(以下、『上伊那ぼたん』)は、それぞれ2026年春クールにおいて「作画がいいアニメ」として称されることの多い2作品だ。読売新聞でも相次いで取り上げられる(※1)など、コアなアニメファンの枠を超えて注目を集めつつある。
 
 今回は違う映像的な方向性を持ちながらも同じ「作画がいい」という言葉で形容されがちなハイクオリティなアニメについて、『とんがり帽子』と『上伊那ぼたん』を題材に詳しくその魅力に迫ってみたい。

アクションと芝居の両輪『とんがり帽子』

【WEBCM】TVアニメ「とんがり帽子のアトリエ」ラストスパートWEBCM

 『とんがり帽子』は、魔法使いに憧れる少女ココが、魔法使いの学び舎たるアトリエで、暴走した魔法によって石化した母親を元に戻すべく姉妹弟子と共に魔法を学ぶ物語だ。

 原作は白浜鴎による『月刊モーニングtwo』(講談社)連載の漫画で、精緻に描き込まれたファンタジー世界の構築と児童文学的な冒険譚が魅力の作品だ。
 
 『とんがり帽子』を作画のいいアニメとして観るならば、魔法のアクション的な最大出力の高さと、全体を通したキャラクター描写や布などの多様さをもったクオリティの高さの2点になるだろう。

 第1話の終盤の魔法の暴発時にキーフリーが飛靴を使用する長回し。第3話のココが帆を使いダダ山脈を飛ぶ躍動感溢れるシーン。2万枚を超える作画枚数でも話題になったドラゴンと対決をする第5話。これらは魔法のエフェクトやアクション的な派手さを伴った作画のいい部分だろう。

 一方で、『とんがり帽子』はささやかな日常芝居における作画的なうまさも見逃せない。第1話の洗濯のために歩くココのシーンや、各話の魔法陣を書く手の芝居やシリーズ全体を通して維持される顔の作画など、総じて一定以上のクオリティを保ち続けている。細かいディティールをあまり落とすことなく、作品世界で生きていることに説得力のある日常作画は、魔法やバトルといった派手さはないもののこの作品の魅力に大きく貢献している。

芝居と小物の『上伊那ぼたん』

オープニングムービー完全版|TVアニメ『上伊那ぼたん、酔へる姿は百合の花』

 『上伊那ぼたん』は、秩父を舞台に同じ寮に住む女子大学生たちが酒をはじめとした趣味を楽しみながら交流を重ねていく姿を描く作品だ。『mono』などで知られるソワネが制作した。

 ソワネが『ヤマノススメ』シリーズで制作を務めた村田光・藤田規聖によって立ち上げられたスタジオであり、参加スタッフの多くが『ヤマノススメ』シリーズと共通している。例えば同シリーズで監督を務めた山本裕介は第2話、第7話で絵コンテを務めている。また『上伊那ぼたん』の原作者・塀も『ヤマノススメ』で原画を務めたことがあるなど、その関わりは深い。

 『上伊那ぼたん』は女子大学生たちの趣味と交流を描く作品であるため、『とんがり帽子』のような空を舞いながら魔法で龍を倒すようなアクションは見られないが、日常芝居と小物の作画に関しては無類のものがある。

 ソワネの前作にあたる『mono』ではスケートボードで山をくだる長回しの作画や360°カメラでの撮影を模したような作画など、難易度の高いアクション要素のある場面が作画的な見せ場として機能していた。

 一方で『上伊那ぼたん』においてはそうした『mono』にあった動きの大きい場面はなく、日常的な芝居や松尾祐輔による細やかなプロップデザインの作成などに大きくその作画的な魅力が依拠しているといえるだろう。

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