『風、薫る』意外にも“シマケン”佐野晶哉に勝機あり? 気になるりん×虎太郎との三角関係

一方で、自分には自信がなく、書いた小説もなかなか人に見せたり、応募したりできずにいる。そんな島田は、何度も壁にぶつかって悩んだり葛藤したりしながらもまっすぐに看護婦を目指すりんに励まされると同時に少しずつ心惹かれていったのではないか。りんに一目でも会いたくて、寮生活を送る彼女が唯一帰ってくる日曜日には必ず「瑞穂屋」に姿を現すようになる。りんに至近距離から話しかけられ、思わずドキッとしてメガネをかけ直したり、安(早坂美海)と宗一(上杉柊平)を仲立ちする場で嬉しそうにりんの話をしたりと、島田のピュアな恋心を佐野は実に鮮やかに表現している。そのさまはかわいらしさとおかしみに溢れていて、まるでラブコメのヒロイン。そのため、周囲にはバレバレだが、本人はあくまでも自分の恋心に無自覚なようだ。

そんな島田が本当の意味でりんへの恋心を自覚したのは、女郎・夕凪(村上穂乃佳)の騒動の時だろう。客と服毒による心中を図って、りんの実習先である帝都医科大学附属病院に運ばれてきた夕凪。一命は取り留めたものの、女郎屋に戻れば、再び地獄の日々が待っている彼女をりんが助けようとしていることを知った島田は、夕凪の心中事件に大胆な創作を加えた新聞記事で遊郭の問題を訴えかけるという手段に出た。島田の記事は人々の心を動かすも、夕凪が女郎屋の主人から報復に遭うことを恐れるりんは強く反発する。純粋に夕凪を助けたいと願っているりんを前にして、島田は自分の邪な気持ちに気づいたのではないか。島田が助けたかったのは、夕凪を助けようとしているりんであり、少しでも役に立つために筆の力を使った。そのことを反省するとともに、りんへの恋心を自覚したのだと思う。

そんな中で虎太郎と対面し、ようやく火がついたのではないか。かつて「いつかシマケンさんの小説を読んでみたいです」と言われ、「読んでもらえるものが書けるように精一杯励みます」と答えた島田。その約束を果たすべく、来る日も来る日も机に向かい、ようやく自分が納得のいく小説を書き上げることができた。6月23日に放送された第62話では、小説を誰よりも早く読んでもらおうと団子屋でりんを待つも、すんでのところですれ違ってしまう。りんは超がつくほどの鈍感、島田は奥手であるがゆえになかなか進展を見せない2人の恋。しかし、弱さと強さの両面を兼ね備え、いざというときには頼りになる島田は、ちょっぴり世間知らずで、間違えながら前に進んでいくりんにはきっと必要な存在だ。島田の成長をきっかけに、りんが少しでも彼を意識してくれればと願わずにはいられない。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















