『GIFT』賛否両論の“涼の死”はなぜ描かれた? 名作スポーツものに通ずる残酷な構造

池井戸原作のリアルな企業×スポーツものによって日曜劇場のスポーツものは成功と定着をしてきた。ところが2020年以降は変化が見られる。久しぶりのスポーツもの・鈴木亮平主演の『下剋上球児』(2023年)は企業から高校へと舞台が変わる。
『下剋上球児』が大切にした“ドラマ”としてのリアル 新井順子P×脚本・奥寺佐渡子に聞く
「日本一の下剋上まであと◯日」。放送回を重ねるごとに◯の中の数字が減っていき、ついに残り「1日」となったTBS日曜劇場『下剋上球…原案は菊地高弘によるノンフィクション『下剋上球児』。10年連続県大会初戦敗退の弱小校だった三重県立白山高校が夏の甲子園に初出場するまでの軌跡を追った原案の大筋をもとに、登場人物や枝葉のストーリーはオリジナルに近い。とりわけ主人公が大胆に変更されている。野球部を率いた教師がドラマでは、ある理由で教員免許を持たないまま生徒を指導している人物に設定されたのだ。原案の教師は教員免許を持っている。主人公にミステリアスな面や彼の罪悪感を付与することで、ストレートなスポーツものではない、独特の複雑な味わいが生まれた。興味深いのは、主人公が清廉潔白ではなく罪を背負っていることだ。社会や組織の都合で不利益を被った人物の逆転ではなく主人公にも悪いところがある。ではそれをどう償っていくかという勧善懲悪物語からの脱却が試みられた。
一方、綾野剛主演の『オールドルーキー』(2022年)では再び主要人物の年齢層が上がる。だが主人公は逆転劇のヒーローではなく、アスリートを引退し、新たな人生を生き直す側である。元プロサッカー選手で現役アスリートの代理人やマネージメントを行う「スポーツマネージメント」会社に転職し、アスリートをサポートする側にまわる。各回、様々なスポーツのアスリートが登場し、主人公は彼らの人生を見つめていく。
近年はこのように、主人公が組織のダイナミズムのなかでプレイしていくヒーローではなく、少し違う立ち位置にいる人物になってきた。関わる人々の物語に寄り添いながら自分の内面にも向き合っていく。『GIFT』は、主人公・伍鉄が天才過ぎて周囲と摩擦を起こしてしまう人物だが、本人はマイペース。ブレイズブルズと出会ったことで、彼の天才性が十二分に発揮できるようになる。

できるだけスポーツの臨場感を大事に、丁寧に取材を行う伝統はそのまま。『GIFT』では日本車いすラグビー連盟が監修に入っている。序盤、車椅子ラグビーが一般的に馴染みがなくわかりにくいという感想もSNSで散見された。だが『ノーサイド・ゲーム』同様、試合の熱や、車椅子のぶつかりあいの重さ、速度感などは非常に見応えがある。車椅子に乗って試合をする俳優たちとそれを撮影していくスタッフたちはなかなか大変なことをやっていると感じる。手間をかけた労作だ。
身体性を実感することを通して、生きる精神性を回復する。『GIFT』に感じるテーマ性、これが近年の日曜劇場のスポーツものの特性になりつつあるように感じる。伍鉄という強い味方を得て、弱小チームのメンバーたちはそれぞれの能力や情熱を引き出され、チームの結束力が強まっていく。チームの結束力、その最後の仕上げが涼の死。名作スポーツものに不可欠なそれが、あらかじめ脚本のプロットに組み込まれていたのだとしたら、いい意味で計算高い。
■放送情報
日曜劇場『GIFT』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:堤真一、山田裕貴、有村架純、本田響矢、細田善彦、細田佳央太、円井わん、越山敬達、八村倫太郎、やす(ずん)、水間ロン、冨手麻妙、ノボせもんなべ、杢代和人、宮﨑優、生越千晴、町田悠宇、澤井一希、中山脩悟、田口浩正、西尾まり、真飛聖、麻生祐未、菅原大吉、吉瀬美智子、玉森裕太、安田顕、山口智子、櫻井翔
脚本:金沢知樹
企画・演出:平野俊一
演出:加藤尚樹、伊藤弘晃
プロデューサー:宮﨑真佐子、内川祐紀
協力プロデューサー:中澤美波
監修・協力:一般社団法人日本車いすラグビー連盟
製作著作:TBS
©TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/GIFT_tbs/
公式X(旧Twitter):@gift_tbs
公式Instagram:gift_tbs
公式TikTok:@gift_tbs























