太田光、『風、薫る』で表現者として新たな覚醒へ 笑いにとどまらない多彩な経歴

太田光、朝ドラ出演で表現者として新たな覚醒

「助けてくれ〜!」

 太田光は叫ぶ。その勢いのまま、相方・田中裕二と時事をバッサバッサと切り捨て、笑いに昇華していく。爆笑問題の漫才は、いつだってワクワクする――。

 幾多の番組を抱える今もセンターマイクの前に立ち、生の舞台で自分を表現する太田。テレビやラジオへフィールドを変えてもその凄みは変わらず、“己の感情”を武器に本音をぶつけていく。

 そんな漫才師として、タレントとしてトップを走り続けるこの男が、今度は「朝ドラ」という新たな表現の場に降臨するという。その舞台となるのが、現在放送中のNHK連続テレビ小説『風、薫る』だ。

 本作は、明治時代に生きる一ノ瀬りん(見上愛)と大家直美(上坂樹里)が、当時まだ知られていなかった看護の世界に飛び込み、奔走する物語。太田は、長屋住まいの身寄りのない男・遠藤平蔵を演じる。けがをきっかけに直美が見回りに来るように。しかし、彼はいつも酒をあおっていて……という役どころだ。

 破天荒に暴れるいつもの姿を想像していたが、公開された予告編に映っていたのは、まったく別の顔だった。抑えたトーンで直美に「生き残るんだったら、じっとしていることが一番だよ」と語りかけていたのだ。とはいえ、これだけで見極めるのはまだ早い。澄ました顔の裏に何を隠しているのか。はたまたどこかで一癖ある素顔をのぞかせるのか。一筋縄ではいかない男の「次の顔」に、まんまとワクワクさせられている。

 思えば、太田光はいつだって「自らが立った場所」を自分色に染め上げてきた天才だった。たとえば、現在の爆笑問題は漫才のイメージがあるが、実は若手時代はコントも披露していた。ウッチャンナンチャンやオードリーなどを輩出したライブ「ラ・ママ新人コント大会」では、現在も続く「コーラスライン」というコーナーがある。「つまらない」と思った一定数の観客が手を挙げると強制終了なのだが、当時新人だった爆笑問題はなんと15分間続け、すべてやりきったという伝説を残している。

 また執筆活動では、エッセイに加え、小説『マボロシの鳥』(新潮社)や『笑って人類!』(幻冬舎)を発表。SMAPの楽曲「We are SMAP!」、田原俊彦の楽曲「ヒマワリ」の作詞を担当し、映画『アイス・エイジ』シリーズでは声優も務めている。

 あまり知られていないが、若手時代には俳優としてドラマや映画にも出演。『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)の「不幸の伝説」で演じた男A役、アンニュイな雰囲気で物語を掌握した映画『草の上の仕事』では主演を務め、強烈なインパクトを残した。

 何より、2025年のNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に、田中とともに出演したことは、大きなニュースとなった。同作では、短いシーンながらクセのある人相見・大当開運を演じ、印象的なアドリブも披露。「太田光」が演じる必然性を感じさせた。こうした大河ドラマや朝ドラで見せる確かな存在感は、「俳優・太田光」の再評価を予感させる。

 ……ここで「お笑いを軸にマルチな才能を持ち合わせている」と締めてしまえば、彼の活動を一言で説明した気にはなれる。だが、太田光という存在をその「枠組み」に収めてしまうのは、どこか本質を見誤っている気がしてならない。私たちがどんなラベルを貼ろうとも、彼はそれすらも破り捨てる。こちらの想像をはるかに超えた場所へと飛び立ってしまうからだ。

 「お笑い」という主戦場から自在にはみ出し、その混沌としたエネルギーで大衆の注目を一気にさらう太田光。まさに今回の『風、薫る』出演は、「表現者として」の新たな覚醒を目撃する絶好の機会となるに違いない。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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