『ワンダーフールズ』が描く1999年の韓国社会の閉塞感 “何者でもない”若者たちの足掻き

さて、本作においてとくに興味深い点だといえるのが、劇中に登場する超能力や時代設定、そして世界観が、どのように意味づけされているかという部分だ。舞台となる1999年の韓国は、1997年末の経済破綻を経て、急進的な構造改革によって経済の立て直しを図ろうとしていた。そして、規制緩和のなかで生まれたのが、リストラに遭う大勢の人々と、急増する非正規労働者だった。
そんな時期に、これから世に出ようとしている若者たちは、より厳しくなっていく能力至上主義の競争をさせられることになる。企業や社会のシステムにとって必要のない存在だと見なされれば社会の隅へと弾き出される。このような就職難と生活の不安定さのなかで、当時の若者たちの多くは、自分が社会にとって代替可能な“何者でもない”パーツであるという意識を植え付けられ、自信を喪失せざるを得なかったのだ。
劇中に登場するカルト宗教の存在もまた、この時代の空気を反映している。社会全体が不況のなかでは、個人の不安や悩みが大きくなることで、カルト的な新興宗教が支持を得る場合がある。最近、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の総裁が、前大統領夫妻や国会議員への不正な金品提供および業務上横領などの疑いで逮捕されたように、過去の時代の余波は、現在にも濃い影を落としている。
そう考えれば、チェニをはじめとする面々が、なかなか自身の超能力をコントロールできず、「何者でもない」として軽んじられる点は、現実の社会において資質を持ちながらも条件の良い就職ができず、自信を喪失してゆく当時の若者たちを象徴しているといえよう。これは、日本における「就職氷河期世代」にも通底する話だ。そしてこれもまた、現在の問題含みの社会に影響を及ぼしたことを意識せざるを得ない。
しかし、だからといって彼らに真の能力がないわけでも、社会に寄与できないわけでもないはずだ。それぞれに然るべきポストが用意され、あるいは人生のさまざまなタイミングでチャンスが与えられさえすれば、個としての輝きを放つことができるだろう。本シリーズのクライマックスにおいて、抑圧されていた個々の実力がついに覚醒し、さながら『アベンジャーズ』シリーズのように、登場人物たちの立ち姿を捉えるカメラがまわり込む瞬間。そこには、社会から疎外され自信を失った世代が自らの尊厳を取り戻すという、現実につながるカタルシスがあるのだ。
■配信情報
『ワンダーフールズ』
Netflixにて配信中
出演:パク・ウンビン、チャウヌ、チェ・デフン、イム・ソンジェ
制作:ユ・インシク、ホ・ダジュン
























