春ドラマのヒロインはなぜ“主婦”なのか? 永作博美、麻生久美子らが抗う旧来の“常識”

5月を迎え、各ドラマの空気が肌になじんできたこの頃。局をまたいで俯瞰してみると、ゴールデンプライム帯のドラマだけでも主婦が主人公のドラマが多いことに気づく。そして、主婦という一言でまとめられる一方で、それぞれの主人公が置かれた状況はまったく異なっているのが面白い。
『時すでにおスシ!?』

『時すでにおスシ!?』(TBS系)の主人公・待山みなと(永作博美)は、スーパーの正社員として働きながら、主婦として、母として、生きてきた女性。夫を交通事故で亡くして以降、一人息子・渚(中沢元紀)のために、日々を積み重ねてきた。
第1話を振り返ると、第2の人生を踏み出したみなとの迷いは、どうにも根深かったことを思い出す。鮨アカデミーで出会った、希望に満ちた同級生たちに、完全におじけづいていた。みなとは息子を第一に優先して生きてきたからこそ、自分を基点とした未来を見ることが難しくなってしまっていた。
みなとが第2の人生に対して抱える不安は、それだけ渚との生活が充実していたことの証明だ。みなとの空の巣症候群を見ていると、逆説的に、育児をすることは、必死に取り組むことが楽しく、尊いものなのだと感じる。その分、喪失感が大きいのではないだろうか。
みなとは寂しさを抱えている一方で、巣立った渚から向けられる優しさに、これまでの時間の手応えも感じているはず。そして、それが次の人生に向かうエンジンにもなっている。第2の人生も、渚からの親孝行も、母親業を必死にやってきたからこそのご褒美だ。
『時すでにおスシ!?』は、育児を終えた母親を通して、主婦のやりがいという明るい側面を描くドラマと言える。
『月夜行路 -答えは名作の中に-』

『時すでにおスシ!?』とは逆に、主婦業の手応えを感じられていなかったのは、『月夜行路 -答えは名作の中に-』(日本テレビ系/以下、『月夜行路』)の沢辻涼子(麻生久美子)だ。
過去にはバドミントンでオリンピックを目指していたが、現在は専業主婦として家事育児に専念している涼子。娘からも息子からもないがしろにされ、夫には不倫疑惑が浮上。涼子は、偶然出会ったバーのママ・野宮ルナ(波瑠)に促されて、大阪へと過去の恋人探しの旅に出る。
印象的なのは、第4話でカズト(作間龍斗)が残した「涼子ならきっと大丈夫」という言葉が、涼子の背中を押したことだ。家事育児をメインで担い、家を守っているにも関わらず、涼子は自分に"大丈夫ではなさ”を感じていたのだろうか。みなとと同じく、自分だけの希望や未来が見えない不安定さを抱えていたのかもしれない。
涼子は、家族からどんな扱いをされようと主婦も母親もやめないと、いて当たり前の存在と思われていたのだろう。居て当たり前だから、過小評価される。必死に家を守っているのに、そんな扱いを受けるのであれば、日常に不満を抱いても仕方がない。
涼子の姿からは、主婦や母親業が軽視されがちだという暗い面が見えてくる。『時すでにおスシ!?』とは逆に、主婦のつらい側面を描いていると言えるだろう。



















