『銀河の一票』は誰に対しても“開かれた”ドラマだ J-POPとの繋がりに感じる作り手の意図

ドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)の第5話において、「チームあかり」の一員である五十嵐隼人(岩谷健司)が「光を届けるのは闇だからね」と言った。その時、第4話における「スナックとし子」の閉店の夜の光景が重ねられる。スナックのママだった月岡あかり(野呂佳代)が、主人公・星野茉莉(黒木華)と共に外に出て、店じまいの感慨とともに看板のコンセントを抜き照明を消すことで、「今日は見えない」と思っていた無数の星の存在に気づくことができたという場面だ。「光を届けるのは闇」という言葉を聞いた茉莉の脳裏に浮かんだのであろうその光景は、本作そのものの一面的でなさを示しているように思う。
あかりと初めて会った時の茉莉にとって「光に見えた」あかりの明るさの下には、深くて暗い闇がある。「10年前に起きたある出来事」が原因なのであろう、気づいたら「冷たくて暗い水の中に、スーって吸い込まれていく」かのような闇を抱えて生きる彼女は、「誰かのために生きる」ことでなんとか自分を保っている人物だ。
一方、彼女たちと都知事選で対峙する日山流星(松下洸平)も、茉莉からすれば彼女を裏切った憎き人物ではあるが、幼い頃から自身の過酷な境遇ゆえに他者から向けられる「かわいそう」を冷静に客観視し「物語」に変えることで政治の世界を生き抜いてきた人物でもある。茉莉もまた、「きれいごと=きれいなこと」と自他ともに認める、崇高な理想に燃える人物でありながら、突っ走った先で、よく未熟な自分に突き当たり、反省している。「あんまりないもんね、気持ちが1つだけって」「混ざってるもんね大抵」とあかりが第3話で言ったように、本作の登場人物は、光と闇、強さと弱さといった、相反する性質や感情を併せ持っていて、だからこそドラマとして信頼できる。
そしてこれは、誰に対しても「開かれた」ドラマなのだと思う。各話において、中島みゆきの「悪女」やウルフルズの「笑えれば」、大黒摩季の「あぁ」といったJ-POPの名曲が登場する。「悪女」の話を茉莉としていてあかりは、前述した第3話の「人の気持ちは1つだけではない」という思いに至った。そしてそれはあかりの恩人であり「スナックとし子」の先代のママである鴨井とし子(木野花)が残したメモ用紙の表と裏に書かれた、異なる2つの思いを明らかにするきっかけとなった。第4話における「笑えれば」は、「スナックとし子」の最終日を彩るだけでなく、「穴に落ちる」で繋がる第4話冒頭の五十嵐の過去と現在を示すモノローグから、終盤の日雇い労働者の青年・野原北斗(阿久津仁愛)を前にあかりが語る「私の政策」に至るまでの流れの中に、曲そのものの精神もまた宿っているように感じることができる(「最後に笑えりゃ上等と」「また笑えるような」「心からワハハーって」)。
さらに第5話の「あぁ」に至っては、歌詞を勘違いして覚えていたあかりが引用するだけでなく、元西多摩市長の雲井螢(シシド・カフカ)が、息子・陽太(山本弓月)に歌詞通り背中を「グッと押され」る形で「チームあかり」に加わる場面が印象的だった。本作とJ-POPの繋がりには、本作を観ている視聴者の誰もが「自分ごと」として登場人物たち、及び政治のことを考えずにはいられなくなるような、分かりやすく親しみやすい「選挙エンターテインメント」にしようという作り手の意図を感じさせる。
また、あかりは常に、付け焼刃の知識ではなく、自分の言葉で話そうとする。だから人々の心を打つのであるが、その「自分の言葉」の根底には、彼女の「スナックのママ」としての経験がある。だからこそ彼女の言葉の端々には、常連客たちとカラオケでよく歌ってきた曲の数々が浸透していると考えたら、それこそ第5話の茉莉が言った「政治家の娘として生まれた私と秘書だった私、今の私、みんなで一緒に2人のことを守る」ことができる幸せと同様に、彼女もまた、手放した「スナックのママ」としての自分がそこに息づいていることがわかる。
日山流星の背負う「物語」に対抗して、五十嵐は「民政党幹事長に切り捨てられた負け犬たちのアベンジ」という自分たちの「物語」を打ち出した。でも、彼ら彼女たちは知らない軌跡もまた、そこにあることを視聴者は知っている。本作の作りとして印象的なのは、各話の序盤において、「私に(俺に)世界は〇〇すぎた」で締めくくられる、各話の主軸となる「登場人物のモノローグに合わせてそれぞれの日常と過去が描かれる場面」が用意されていることだ。そしてそこに1つの共通項がある。
茉莉回だった第1話で茉莉は、点字ブロックの上に鞄を置いて電車を待つ男性に注意をしている。あかり回だった第2話ではあかりが、数台の自転車が点字ブロックを塞いでいることに気づき、自転車の位置を動かしている。五十嵐回だった第4話では、五十嵐が、点字ブロックに気づかず、その上で雑談している学生たちに声をかけている。点字ブロックの黄色い線が、知らず知らずのうちに「チームあかり」の物語を繋いでいるとしたら、第5話で日山流星の演説を聞こうと集まってきた人々が気づかず点字ブロックの上に立っていることを黙って見つめているYouTuber・白樺透(渡邊圭祐)もまた、彼女たちの物語に深く関わっていくことになるに違いない。
■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
主題歌:浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代「おーへい」(日本コロムビア)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ginganoippyou/
公式X(旧Twitter):https://x.com/gingaippyou
公式Instagram:https://www.instagram.com/gingaippyou/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@gingaippyou



























