波瑠、『月夜行路』で開花させる新たな魅力 『フェイクマミー』の振れ幅がより深化?

波瑠が『月夜行路』で見せる新たな魅力

 波瑠が新ドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中に―』(日本テレビ系/以下、『月夜行路』)で、銀座のバー「マーキームーン」のママ・野宮ルナを演じる。4月8日にスタートする本作は、秋吉理香子の同名小説を原作にした文学ロードミステリー。麻生久美子演じる専業主婦・沢辻涼子とルナが旅をしながら事件に向き合っていく物語で、ルナはトランスジェンダー女性であり、自称・小説家志望の文学オタク。古今東西の名作文学を武器に、行く先々で起きる出来事や人間関係のほころびを見抜いていく。

 本作でまず惹かれるのは、波瑠がこれまで積み重ねてきたイメージと、野宮ルナという役の相性のよさだ。ルナは、ただ博識な人でも、ただミステリアスな人でもない。鋭い観察眼で相手の奥に踏み込みながら、ときに強引に、ときに軽やかに背中を押していく人物である。名作文学を手がかりに事件の真相を解く役どころだけに、知性や説得力はもちろん必要になる。だが、それ以上に求められるのは、相手の痛みを見抜いた一言に体温を宿せることだろう。

 もともと波瑠の魅力は、すっと背筋の伸びた理知的な佇まいの中に、感情の揺れを滲ませられるところにある。『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日本テレビ系)で演じた大桜美々も、企業で働く人々の健康を管理する産業医として、周囲からは厳しく距離のある人物に映っていた。だが、その一方で、恋愛にも人間関係にもどこか不器用で、自分の気持ちを持て余してしまうような一面も抱えている。そうした強さと脆さが同居する人物像を、無理なく成立させられるのが波瑠の強さだった。

 『G線上のあなたと私』(TBS系)は、波瑠の親しみやすさが印象に残る作品だった。波瑠が演じた小暮也映子は、寿退社を目前に婚約破棄され、仕事も結婚も失ったことをきっかけに、バイオリン教室へ通い始める女性。端正なルックスや落ち着いた声はそのままに、この作品では、それが気丈さではなく、不器用に揺れながら前へ進もうとする也映子の健気さとして表れていた。しっかりしているようで、どこか放っておけない。その絶妙なバランスが、役の魅力を自然に引き上げていた。さらに『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)では、営業成績ナンバーワンのエース社員でありながら、私生活では“汚部屋”で暮らすズボラな速見穂香を演じ、仕事とプライベートの落差を軽やかに見せていた。

 そうした波瑠の振れ幅が、より複雑な人物像につながっていたのが『フェイクマミー』(TBS系)の花村薫だ。東京大学卒で大手企業を辞め、転職に苦戦するなかで“学校専用のお母さん”を引き受ける薫は、能力の高い人物でありながら、社会の中でうまく馴染めずにいる。波瑠がこれまで演じてきた“できる人”の延長線上にありながら、その内側に不器用さや孤独、生きづらさまでにじむ役だった。

 『月夜行路』のルナは、波瑠が近年の作品で見せてきた魅力がよく生きる役だ。理知的な佇まいの中にどこか親しみやすさがあり、その奥に孤独や生きづらさものぞかせる。ルナはまさに、そうした複数の表情をあわせ持つ人物である。文学を手がかりに人の本心や出来事の核心へ迫っていく役だけに、求められるのは情報量の多さをさばく器用さだけではない。言葉の向こうに、その人物が生きてきた時間まで感じさせること。それができる波瑠だからこそ、この役は強く映るはずだ。

 人の本心を見抜く鋭さと、言葉にできない痛みに寄り添うやわらかさ。その両方が求められるルナという役で、波瑠がどんな説得力を見せるのか。『月夜行路』は、波瑠にとって新たな代表作になりそうだ。

■放送情報
『月夜行路 ―答えは名作の中に―』
日本テレビ系にて、4月8日(水)スタート 毎週水曜22:00〜放送
出演:波瑠、麻生久美子、栁俊太郎、作間龍斗(ACEes)、渋川清彦、田中直樹
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社)©︎秋吉理香子/講談社
脚本:清水友佳子
音楽:Face2fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
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