道枝駿佑が放つ唯一無二の“儚さ” 『君が最後に遺した歌』で見せた静かな“覚悟”

『君が最後に遺した歌』道枝駿佑の儚さ

 なにわ男子の道枝駿佑が、俳優としても目覚ましい活躍を見せている。

 アーモンドのように整った瞳、すっと通った鼻筋。道枝を見ると、端正な顔立ちにまず目を奪われるが、彼の魅力はそれだけではない。普段はどこかクールで飄々としているのに、ふと笑った瞬間、目じりが柔らかく下がり、白い歯がのぞく。その瞬間、彼の奥底に潜んでいた「甘さ」がふわりとこぼれ落ちる。

 このクールさと甘さの「ギャップ」こそが、道枝が切ないラブストーリーで観客の心を掴み続ける理由なのだろう。

 公開中の映画『君が最後に遺した歌』では、『今夜、世界からこの恋が消えても』の三木孝浩監督と再びタッグを組んだ。原作は、一条岬の同名小説。10年にわたる男女の恋を、音楽とともに紡いだ切ないラブストーリーだ。

 道枝が切ない恋物語に姿を現すと、ただそこに立っているだけで、ふっと風にさらわれてしまいそうな儚さが漂っていく。たとえば、『今夜、世界からこの恋が消えても』では、1日ごとに記憶がリセットされる真織(福本莉子)を愛し続ける神谷透を演じた。思い出を積み重ねられない恋をする中で、「君の毎日を楽しいものにしたい」と願う神谷の瞳は、透明な光を宿しながらも、どこか彼女と共に消えてしまいそうな危うさを秘めていた。

 道枝が切ない恋を演じると、今にも消えてしまいそうな気配が漂う。だからこそ、本能が訴えるのだろう。スクリーンに映る彼を、決して見逃してはいけない、と。10月には主演映画『うるわしの宵の月』の公開も控え、俳優としての活躍はさらに広がっていきそうだ。

 『君が最後に遺した歌』で道枝が演じるのは、文字の読み書きが難しい「発達性ディスレクシア」を抱えながらも、歌の才能に恵まれた綾音(生見愛瑠)に恋をする高校生・水嶋春人だ。詩作を密かな趣味としながらも、自分には才能も夢もないと劣等感を感じながら、日々静かに生きていた。

 そんなある日、綾音が「お願い、私に言葉をください」と、春人に懇願する。その瞬間、春人は彼女が文字を認識できない障害を抱えていることを知り、「世界が背を向けても守りたい恋がある。そばにいる。ずっといる。僕が書いて、君が歌う」と、心に誓い始める。

 それまでの春人は、どこか不安げな影をまとっていた。けれど綾音の前では、なんとか気丈に振る舞おうとする。ところが、彼女が見ていないところでは、眉を寄せ、口元をわずかに歪ませていく。その小さな心の揺らぎを、道枝は丁寧に演じ切っていた。

 そもそも人は、自分の「できること」に案外気づけないものだ。誰かに求められて初めて、その得意が「価値」を帯びることがある。春人と綾音もまた、自分の強みに無自覚なまま、互いの「できること」に惹かれ、憧れ、嫉妬し、ときに支え合いながら、少しずつ心をすり合わせていく。

 綾音は、文字を読めないことに劣等感を抱えながらも、表向きはきらきらとした笑顔が印象的だ。歌について語るときの輝き、ギターを弾きながら歌うときの無邪気な様子は、まるで太陽のようにキラキラと眩しい。そんな彼女の煌めきを見つめる春人は、目を瞬かせながらも、どこか寂しさを帯びた表情を浮かべていく。まるで、眩しい太陽をそっと見守る月のように……。

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