佐久間大介は“踊ることで語る俳優”へ 『スペシャルズ』で放つ“泥臭くも愛おしい”輝き

「殺し屋がダンス」という設定を聞いて、どんな映画を思い浮かべるだろうか。3月6日、日本映画界に類を見ない異色のエンターテインメントが誕生した。内田英治監督が手掛ける最新作『スペシャルズ』である。一見すれば荒唐無稽なコメディを想像させる設定だが、スクリーンから溢れ出すのは、内田監督が描き続けてきた「孤独な者たちの再生」という切実な人間ドラマ。そして、その再生を可能にする“ダンス”という身体表現が持つ、理屈抜きのエネルギーだ。
物語は、裏社会のトップ・本条(石橋蓮司)を暗殺するという極秘ミッションから動き出す。本条の隙を突くため、風間組の熊城(椎名桔平)は、腕利きの殺し屋たちに「ダンス大会への出場」を命じる。集められたのは、伝説の殺し屋・ダイヤ(佐久間大介)をはじめ、桐生(中本悠太)、シン(青柳翔)、村雨(小沢仁志)といった孤高のプロたちだ。当初は「任務」に過ぎず、それぞれの思惑に比例して動きもバラバラ。ダンス大会への出場など不可能に思えた。しかし、練習を重ねるうちに彼らが封印してきた過去や感情が共鳴し、やがて奇妙な連帯感を生み出していく。

内田英治監督の作品には、常に「異質なものの融合」という一貫したテーマが流れている。新宿の片隅で生きるトランスジェンダーとバレエ少女を描いた『ミッドナイトスワン』。ベテラン刑事と音楽を掛け合わせた『異動辞令は音楽隊!』。一見交わるはずのない要素がぶつかり合うとき、そこには強烈なリアリティと叙情が立ち上がる。本作における「殺し屋」と「ダンス」の融合も、まさにその系譜にある。感情を殺し、常に「死」と隣り合わせである殺し屋と、感情を露わにする「生」の象徴であるダンス。本作は、この対極の要素を宿した主人公・ダイヤを起点に、男たちが「生」の拍動に呑み込まれていく様を描き出す。そして、この「死」と「生」の衝突を圧倒的な説得力で体現しているのが、ダイヤを演じる主演・佐久間大介だ。
内田監督と佐久間のタッグは本作で3度目となる。この2人の歩みは、そのまま佐久間が俳優としてのキャリアを築いてきた軌跡と重なる。初タッグ『マッチング』で監督は、彼のパブリックイメージである「明るさ」を封印し、感情の読めないストーカーという難役を突きつけた。佐久間はあえて「表情を動かさない」リスクを負い、最小限の視線の動きだけで底知れぬ不気味さを表現。本来のイメージとは対極にある「深淵」を描き出せる役者であることを世に知らしめたのである。
続く『ナイトフラワー』では、夜の世界で風俗嬢の送迎をして生きる青年を演じた。ここでは前作の非日常的な狂気とは異なり、より市井の人々に近い、等身大の「影」が求められた。佐久間が体現したのは、生きながらにして心を遠い場所に置き去りにしたような、拭い去れない深い孤独だ。眼差し一つで、生と死の境界線で揺らぐ淡い陰りを描き出した。





















