『モンスターズ・ユニバーシティ』はなぜ異色作に? “成功しない”前日譚を描いた衝撃

だからこそ、マイクが現実の厳しさを突きつけられるくだりには、観ていて息が詰まるような重さがある。どれだけ努力しても、理想通りの形では夢に届かないかもしれない。そう知らされてもなお、彼は簡単には引き下がらない。伝統の“怖がらせ大会”に望みをつなぎ、落ちこぼれ扱いされるウーズマカッパたちをまとめ、少しでも前へ進もうとする。本作は、夢をきれいごととして礼賛するのではなく、執着することの泥くささや不格好さまで描いている。それでも、その青くささを格好悪いものとして片づけない。むしろ、そんなひたむきさを真正面から肯定しているところに、この作品の強さがある。

その姿勢は結末にもはっきり表れている。終盤、問題を起こしたマイクとサリーは退学となるが、子ども向け作品らしく、何らかの理由で退学を回避して2人が学園へ戻るような展開にすることもできたはずだ。だが、マイクとサリーの退学は取り消されない。その代わりに、2人はモンスターズ社の郵便室から社会人としての一歩を踏み出し、さまざまな部署を経ながら少しずつ自分たちの居場所をつかんでいく。その遠回りが妙にリアルだからこそ、この物語には夢のまぶしさだけでなく、そこへ至るまでに積み重なる現実の時間まできちんと描こうとする誠実さがあるように思う。
そして『モンスターズ・ユニバーシティ』のあとに『モンスターズ・インク』を観返すと、このシリーズがただ「夢を叶えるまで」を描いた物語ではないこともよくわかる。念願の職場に立ったあとには、今度は「その仕事をどう続けるのか」「何を信じて働くのか」という問いが待っているからだ。

『モンスターズ・インク』でサリーは、人間の子どもであるブーと出会ったことで、子どもを怖がらせる対象ではなく、守るべき存在として見るようになっていく。やがて、悲鳴ではなく笑いがエネルギーになるという発見にたどり着き、彼らは自分たちの仕事そのものを、よりよい形へと更新していく。『モンスターズ・ユニバーシティ』と『モンスターズ・インク』は、夢のキャリアを追うところから、仕事のあり方を問い直すところまでを描いた作品でもあるといえるだろう。
進路や新生活を前にしたこの時期に『モンスターズ・ユニバーシティ』が放送されることにも、やはり意味があるように思える。夢を追うことのまぶしさも、思い通りにならない現実も、その先で仕事の意味が変わっていくことも、このシリーズはどれも取りこぼさずに描いてきた。サリーとマイクの歩みを追いながら、「働くこととは何か」を、あらためて考える。そんな作品として、この放送を受け取りたい。
■放送情報
『モンスターズ・ユニバーシティ』
日本テレビ系にて、3月20日(金)21:00〜23:04放送
※本編ノーカット
吹替キャスト:田中裕二(マイク/マイク・ワゾウスキ)、石塚英彦(サリー/ジェームズ・P・サリバン)、柳原可奈子(グレーブズ先生)、青山穣(ランドール・ボッグス)、一柳みる(ハードスクラブル学長)、嶋田翔平 (スクイシー)、宝亀克寿 (ドン)
監督:ダン・スキャンロン
製作:コーリー・レイ
製作総指揮:ジョン・ラセター、ピート・ドクター、アンドリュー・スタントン、リー・アンクリッチ
ストーリー:ダン・スキャンロン、ダニエル・ガーソン、ロバート・L・ベアード
脚本:ダニエル・ガーソン、ロバート・L・ベアード、ダン・スキャンロン
音楽:ランディ・ニューマン
©2013 Disney Enterprises, Inc. / Pixar






















