杉咲花の変わり続ける姿が愛おしい 『冬のなんかさ、春のなんかね』の思考を巡る幸福な時間

「長い人生の一部を切り取ってさ、で、そこだけを見て、勘違いして好きになって、実際はその人じゃないみたいなことってさ、あちこちにあるんじゃないのかな」と第5話における学生時代の文菜が言ったように、第1・2話で描かれた土田文菜の「今」だけを切り取って見たところで、彼女が抱えている人生そのものを理解したことにはならないことが回を重ねるにつれて分かってきた。なぜなら彼女と彼女が好きな人、あるいは彼女のことを好きな人との関係性の違いによって、彼女は様々な一面を見せるからだ。また、描かれていないだけで存在している「今」があることも第7話の山田線(内堀太郎)の恋人の不在を通して分かってきた。

第7話では、第1話と重なるエピソードが何度か描かれた。例えば、第1話で山田が居酒屋で話していた「散歩中に犬を見る光景」に、文菜がいる光景。あるいは、第1話のコインランドリーでゆきおと文菜が交わした光景の中に、ゆきおがいない光景。それは、山田の書いた短編小説の原稿の中に登場する「文菜と並んで自動販売機が補充される景色を見ている山田の光景」と「今、その時のことを思い出しながら同じ景色を見ている山田の光景」と繋がって、第7話の副題「ある、ない、いる、いない」が生者と死者の光景であるとともに、過去と現在を巡る光景であることがわかる。そしてそれは、エピソードが一巡したことを示してもいた。

現在から始まって過去を辿って、また現在に戻った。第1話で視聴者が見つめた「現在の文菜」と、第7話で見つめる「現在の文菜」は同じだけどだいぶ違って、「はっきりさせると必ず終わ」ってしまうという予感の前に、各々の手放せない「好き」を抱きしめて、迷いながら立っている文菜たちが、私にはとても愛おしい。でもそれも、あくまで現時点の話。文菜はこれからもずっと変わり続けることだろう。
第4話で二胡が文菜に小説を書くことを薦める時に「なんか、知りたいかも。思考? 何に興味があるのか、とか」と言っていたが、これはきっと、文菜の思考を巡る話だ。それを、読者として追いかけることができる時間を幸福に思う。
小説家で古着屋バイトの主人公・文菜は、過去の経験から恋人と真剣に向き合うことを避けていた。そんな文菜が自分の恋愛を見つめ直していく。演出には、映画監督の山下敦弘と山田卓司も参加している。
■放送情報
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、栁俊太郎、細田佳央太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
脚本:今泉力哉
監督:今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Homecomings 「knit」(IRORI Records / PONY CANYON)
プロデューサー:大倉寛子、藤森真実、角田道明、山内遊
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:AX-ON、Lat-Lon
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/fuyunonankasa/
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