『冬のさ春のね』文菜が“過去”から“現在”に向き合う展開に ほんのり見えた山田の内面

文菜(杉咲花)と山田(内堀太郎)のもとに突然届いた、二胡(栁俊太郎)の訃報。3月4日に放送された『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)第7話。前回までのエピソードが、文菜の“過去”をぼんやりと回想しながら彼女のバックグラウンドを固めていくものだったのに対し、今回からは抗うことのできない“現在”とおそらくその先にあるものへと目が向けられていく。物語上の動きらしい動きがなかったこのドラマにおいて、予想だにしていなかった波が訪れたようだ。
二胡の葬儀の後、文菜と山田は文菜の家で、二胡のことを振り返ったり、“創作”のあり方について言葉を交わしたり。山田いわく、創作は「他人の人生の一時を奪う仕事。ありがたいけど怖い仕事」だという。文菜は最後に二胡に会ったときの会話を思い出しながら、「本当のことだけが誰かを幸せにするとは限らない」と口にする。そんな折、ゆきお(成田凌)から電話が掛かってきて彼の家に行くわけだが、文菜は山田と一緒に家にいたことを悟られないように、あたかも葬儀の後どこかに寄り道をしていただけのように装っている。

まさしくその行動は、先の段落で触れた彼女の発言を体現するかのように。そんなことをごく自然にやれてしまう文菜だけれども、そこから彼女は、自分はゆきおを裏切っているのではないかと思い悩むようになる。“恋愛”とは、すなわち“人を好きになる”とは何かと抽象的で答えのない思案を重ねてきた彼女が、その結論を得る前にある種の具体的なところにたどり着いたわけだ。これがドラマらしいドラマであれば、彼女の“過去”が役に立ちそうなものだが、おそらくそうはならないだろう。具体的な事象の先には、“幸せ”だとか“悲しみ”だとか、また新たな概念がよこたわるのだから。

先の文菜の言葉を受けて、「(創作物は)人を不幸にもするし、幸せにもする」とつぶやいていた山田。今回のエピソードでは、一見つかみどころのなさそうな男である彼の内側がほんのりと見えていた。彼は、死んだ恋人がいまだに生きているものと信じ込みながら生きている。あるいは、彼自身は必死で受け入れて前を向こうとしているけれど、周囲の優しさがなかなかそうさせてくれないだけなのかもしれない。いずれにせよ、ゆきおが文菜に言った「まだ悲しみに至れていない」という言葉が山田の現在を示しているのだと、彼の背中からは読み取ることができよう。

と、これまでは文菜の内側にある“過去”――いわば、それは文菜だけのものだ――を遡り続けていたわけだが、“現在”に至ることで一気に文菜以外の登場人物たちにも肉付けされていく。それを示すように、これまではひたすら文菜と誰かの会話によって構築されていたドラマに、文菜が介入しない瞬間がいくつも訪れている。エンちゃん(野内まる)が真樹(志田彩良)に助言を求めたり、山田が編集部の多田(河井青葉)に原稿を持ってきたり、そしてゆきおが同僚の紗枝(久保史緒里)に食事に誘われたり。文菜だけでなく、それぞれの“人生の一時”を捉える物語にシフトしたわけだ。
小説家で古着屋バイトの主人公・文菜は、過去の経験から恋人と真剣に向き合うことを避けていた。そんな文菜が自分の恋愛を見つめ直していく。演出には、映画監督の山下敦弘と山田卓司も参加している。
■放送情報
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、栁俊太郎、細田佳央太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
脚本:今泉力哉
監督:今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Homecomings 「knit」(IRORI Records / PONY CANYON)
プロデューサー:大倉寛子、藤森真実、角田道明、山内遊
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:AX-ON、Lat-Lon
©日本テレビ
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