『テミスの不確かな法廷』演出陣が撮影の裏側を解説 第6話から登場の齋藤飛鳥への称賛も

現在放送中のNHKドラマ10『テミスの不確かな法廷』より、演出を担当する吉川久岳、山下和徳、相良健一、富澤昭文のオフィシャルコメントが公開された。
本作は、「普通とは何か」「正義とは何か」を問いかけることをテーマとした法廷ヒューマンドラマ。ミラノ・コルティナ2026オリンピックの特別編成により放送を休止していたが、2月23日の第1〜5話の一挙再放送を経て、2月24日よりいよいよ放送が再開される。
チーフ演出を務める吉川は、松山ケンイチ演じる主人公・安堂の演技について言及。「第1話の冒頭で、安堂が歩道のタイルに沿ってまっすぐ歩いていくところは特に印象深い場面の一つです」と振り返り、「リュックを背負ったその背中がものすごく悲しそうに見えて手応えを感じることができました」と松山の表現力を絶賛。今後の展開については「松山さん自身も『まさかこんなふうになると思っていなかった』と驚いていたくらい、松山さんと安堂が一体となった芝居に、最後までぜひご期待ください」と自信をのぞかせた。
法律やASD・ADHD関連の取材を担当した山下は、安堂の特性の描かれ方について解説。「安堂の場合は、自分の意思を言語化できるために周囲の人から障害を持っていることを認識されにくい傾向にあります」と語り、演出面では「そうした特性やカムフラージュしている部分を分かりやすく可視化することで、安堂の生きづらさや葛藤をできるだけ理解してもらいやすいよう意識して演出しました」と明かした。
第5話を担当した相良は、視聴者からの反響に触れ「『僕は宇宙人。だけど、地球人のふりをして生きている』という安堂に、自分自身を重ねて親近感を感じてもらえているのかなという印象も受けています」と手応えを語る。また、恒松祐里演じる落合と市川実日子演じる津村のシーンについて、「恒松さんや市川さんをはじめキャストの皆さんが作品を後押しし、ドラマを豊かにしてくれたと思います」とキャスト陣に感謝を述べた。
放送再開となる第6話を担当した富澤は、「第1~5話でも時折出てきた『前橋一家殺人事件』。その全貌が少しずつベールを脱ぎはじめるのが、放送が再開される第6話です」と見どころをアピール。さらに、第6話以降のキーパーソンとなる吉沢亜紀役の齋藤飛鳥について、「非常に難しいお芝居だったと思いますが、目の表情から亜紀の葛藤や裁判への思いが強く感じられました」と絶賛し、「すでに出来上がっているチームに自ら積極的に加わろうと努力される姿勢もすばらしかったですね」と撮影時のエピソードを明かした。
コメント
吉川久岳(チーフ演出/第1、2、7、8話担当)

第1話の冒頭で、安堂が歩道のタイルに沿ってまっすぐ歩いていくところは特に印象深い場面の一つです。あえて安堂の表情を見せずに彼が抱えている悲しさを表現したかったんですけど、すごく難しいなとも思っていて。撮影初日で松山さんも探り探り演じている部分があったと思いますが、リュックを背負ったその背中がものすごく悲しそうに見えて手応えを感じることができました。安堂というキャラクターを理解するうえでも重要な意味を持つシーンです。
第7話と第8話についてはまだお話しできない部分が多いのですが、25年前の事件の真相を追究していく中で、地裁の人々の安堂に対する理解が深まっていったり、チーム感が色濃くなっていくのも見どころの一つだと思います。物語の前半で描かれていた伏線がこんなところにつながっているのかという驚きの展開もありますし、最後に安堂が法廷で何を話すのかというところもぜひご注目いただけたらと思います。松山さん自身も「まさかこんなふうになると思っていなかった」と驚いていたくらい、松山さんと安堂が一体となった芝居に、最後までぜひご期待ください。
山下和徳(演出/第3、4話担当)

今回は吉川さんを始め4人で演出を担当したのですが、それぞれ役割を分担し、私はおもに法律に関する部分や ASD・ADHD 関連の取材を担当しました。ドラマの中で、安堂が落ち着きなく机を指で小刻みに叩く場面が出てきますが、ASDの人とADHDの人とではその行動に至る理由が全く違います。ASDの場合、何かモヤモヤしたり自分のルーティンから外れると不安になり、それを抑制するために指で刺激を加える。一方、ADHDの場合はじっとしていられない衝動から動き始めるわけです。しかし、定型発達の人から見ると、この特性の違いはなかなか区別がつかないでしょう。ASDの人は他者とのコミュニケーションに苦労することが多いという共通の特徴があります。ただ、安堂の場合は、自分の意思を言語化できるために周囲の人から障害を持っていることを認識されにくい傾向にあります。第3・4話では、そうした特性やカムフラージュしている部分を分かりやすく可視化することで、安堂の生きづらさや葛藤をできるだけ理解してもらいやすいよう意識して演出しました。
相良健一(演出/第5話担当)

これまでの放送をご覧いただいた皆さんのSNSの書き込みなどを見ていると、「法廷物のドラマというとシリアスなイメージがあるけど、エンターテインメントとして面白く見られる」という声が寄せられていてうれしい驚きがありました。「僕は宇宙人。だけど、地球人のふりをして生きている」という安堂に、自分自身を重ねて親近感を感じてもらえているのかなという印象も受けています。
第5話は、安堂の同僚でエリート判事補の落合(恒松祐里)と執行官の津村(市川実日子)の関係を中心に描いた回。声を上げることもできず社会の片隅に埋もれていた少女・春(石田莉子)と向き合いました。それまでベクトルの異なる落合と津村のそれぞれが、最終的に春を訪ねて鉢合わせするシーンは、今後の2人の関係性を描く上でも大事なシーンでした。2人で公園を歩きながらそれぞれの本音を吐露する場面は、本当は秋の設定だったんですけど、スケジュールの都合で冬枯れの公園での撮影となりました(苦笑)。落合が箱から出た、殻を破る部分の演出がストレートすぎていないか、視聴者にどう受け止められるか不安だったんですが、放送後に「落合が悩んでいる表情を見て彼女をもっと好きになった」という声が多かったのでホッとしました。そこは、恒松さんや市川さんをはじめキャストの皆さんが作品を後押しし、ドラマを豊かにしてくれたと思います。
富澤昭文(演出/第6話担当)

第1〜5話でも時折出てきた「前橋一家殺人事件」。その全貌が少しずつベールを脱ぎはじめるのが、放送が再開される第6話です。この事件の詳細と並行して、安堂が誕生した瞬間まで時を遡り、結城との親子関係に光を当てていきます。演出するうえで意識していたのは、「変わっていくもの」と「変わっていかないもの」があるということ。つまり、大人になった安堂が持っている特性は、子どものころからそうだったのか、あるいは成長とともに変わっていったのかを明確に描こうと思いました。
安堂は、赤ん坊のとき、小学校のとき、そして現代と父親の腕を掴む場面が3回あるのですが、それぞれ意味合いが異なるので、その違いが視聴者の方にもうまく伝わるといいなと思っています。
第6話以降のキーパーソン・吉沢亜紀を演じる齋藤飛鳥さんの存在は、ラストに向けてすごく大きいと思います。父親の遺品を見て感情的になる場面が描かれるのですが、それが齋藤さんにとっての撮影初日だったんです。非常に難しいお芝居だったと思いますが、目の表情から亜紀の葛藤や裁判への思いが強く感じられました。すでに出来上がっているチームに自ら積極的に加わろうと努力される姿勢もすばらしかったですね。
■放送情報
ドラマ10『テミスの不確かな法廷』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送(全8回)
【一挙再放送】
第1話:2月23日(月)15:05~15:50
第2話:2月23日(月)24:35~25:20
第3話:2月23日(月)25:20~26:05
第4話:2月23日(月)26:05~26:50
第5話:2月23日(月)26:50~27:35
NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信予定
出演:松山ケンイチ、鳴海唯、恒松祐里、山崎樹範、山田真歩、葉山奨之、市川実日子、和久井映見、遠藤憲一
原作:直島翔『テミスの不確かな法廷』
脚本:浜田秀哉
音楽:jizue
演出:吉川久岳(ランプ)、山下和徳、相良健一、富澤昭文
制作統括:橋立聖史(ランプ)、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、渡辺悟(NHK)
写真提供=NHK






















