『名探偵コナン エピソード“ONE”』で堪能する“新蘭” 思わずファンも唸る切な良い名作

『名探偵コナン エピソードONE』の新蘭に泣く

 2026年はアニメ『名探偵コナン』が放送30周年を迎える。平成の月曜、そして令和にかけて土曜の夜を盛り上げるだけでなく、近年は興行収入の面でも存在感を発揮し、まさに国民的アニメと言える本作。そんな『名探偵コナン』の“はじまり”を再構築し、2時間のテレビスペシャル版として作られたのが、『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』(以下、『エピソードONE』)だ。

 本作は、テレビ放送20周年を記念して作られたもので、テレビアニメ第1話「ジェットコースター殺人事件」を軸に、当時はまだ登場していなかった灰原哀や鈴木園子、京極真などのキャラクターや、後に描かれる「工藤新一水族館事件」などのエピソード、毛利蘭の空手大会の様子などが盛り込まれたものとなっている。

 基本的に『名探偵コナン』は、第1話で高校生探偵の工藤新一が黒ずくめの男に薬を飲まされ、体が縮んで子供になってしまった時点から物語が描かれる。それゆえに、それまでの物語やキャラクター同士の関係性は基本的に回想シーンで肉付けされるかたちになっているのだが、それらの断片的なエピソードを時系列で繋ぎ、地続きの物語として見せてくれる本作は、はじめて『名探偵コナン』に“ちゃんと”触れる者にとっても観やすく、ファンとしても嬉しい仕掛けが盛りだくさん。

 例えば、オリジナルのアニメ第1話の冒頭が、漫画の第1話「平成のホームズ」と同じように洋館での殺人事件の犯人・瀬羽尊徳を指さす印象的なシークエンスから始まるのに対し、『エピソードONE』では原作になかった園子の家で先に瀬羽と出会う場面などが追加されている。他にも、原作でウォッカが会社の社長から現金を受け取る取引の際に渡していた、拳銃密輸の証拠となるフィルムをネガに置き換え、そのネガを事前にウォッカが他の組織のメンバーからバーで受け取るシーンも追加で描かれる。なお、ネガを渡した男に「XYZ」(これで終わり)というカクテルをジンが選び、その男が実はNOC(Non Official Cover/スパイ)で……なんてくだりも、黒の組織の恐ろしさが表現されていて好きだ(その後に大きな男が2人でジェットコースターに乗る絵のギャップも面白い)。

 こんなふうに面白い部分や魅力を挙げだすとキリがない本作。しかし、特筆すべき点は、原作者・青山剛昌が一番大切にしている作品の軸……“ラブコメ”要素が丁寧に描かれている点だ。

“新蘭”を堪能するからこそ泣ける『エピソードONE』

 本作は徹底して「工藤新一」という、本編ではほとんど姿を見せない“不在の主人公”の実存を描いている。普段の本編で私たちが触れる主人公は「江戸川コナン」であり、コナンが新一に戻るときはいつも一瞬だけ。しかし『エピソードONE』では等身大の高校生探偵・工藤新一がどんな表情で笑い、どんなふうに日常を過ごしていたのか、素の彼を見ることができる。そして何より、そんな“工藤新一の瞳を通して見る毛利蘭”が描かれている点が最大の特徴であり魅力なのだ。

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