『名探偵コナン エピソード“ONE”』で堪能する“新蘭” 思わずファンも唸る切な良い名作

『名探偵コナン エピソードONE』の新蘭に泣く

 コナンとして見上げる「蘭姉ちゃん」ではなく、対等な目線で描かれるからこそ、彼女がとにかく光り輝いている本作。2人がトロピカルランドを訪れる場面では、劇場版第4作『瞳の中の暗殺者』で、記憶喪失になった蘭をコナンが守り抜く重要な舞台となる噴水広場が登場。蘭の回想で描かれた瞬間が、彼らの“いま”として描かれる。

 未来で起きる命がけの逃走劇とリンクする場所で、今はただ無邪気に笑い合っている2人。その切なさたるや。そこに重なるようにデートシーンを奏でるZARDの「運命のルーレット廻して」。歌詞と映像がシンクロし、2人の運命の歯車が大きく狂い始めることを告げるこの演出は、もはや「エモい」という言葉では処理しきれない。

 やはり私たちがこの後の工藤新一に待ち受ける運命を知っているからこそ、辛く感じるものがある『エピソードONE』。新一の「すぐ戻るから、先に行っててくれ」という言葉が、結果として嘘になってしまうことを知りながら彼の背中を不安げに見つめ、「もう会えなくなってしまいそうな」予感がしている蘭の不安げな表情......。新蘭の微笑ましいラブコメディとして最高純度でありながら、同時にそれが「新一としての最後の日常」であることを突きつける残酷さも凄まじい。2人が楽しそうであればあるほど、幸せそうであればあるほど、もう二度と戻れない時間の重みに気づかされるのだ。

 そして、そんな残酷さに重なるように描かれるのが「ジェットコースター殺人事件」。ファンには馴染み深く、第1話にして血飛沫がとんでもなく飛び散る殺人事件だが、これが愛した男に裏切られた女性による悲恋の想いが動機となった事件であることを忘れてはいけない。犯行が暴かれ、真相を語りながら涙を流す犯人。その姿を見て、蘭は涙を流す。それは、彼女が誰かを想う気持ちや、恋の痛みを知っているからだ。記念すべき第1話の事件の動機に、あえてドロドロとした愛憎劇を持ってきたこと。そして、その痛みに共鳴して涙する蘭を描いたこと。そして、その後に事件の男女のように、新一と離れ離れになってしまう展開。そういったところにも、これからの物語においてミステリーだけでなく、誰かを想う“感情”や恋愛要素も同じくらい(むしろそれ以上に)大切に描くという、原作者・青山剛昌のステートメントを感じる。

 『エピソードONE』は単なる第1話のリメイクではない。30年以上続いてきた壮大な物語の中で、蘭が新一を待ち続ける理由を再確認するための、あまりにも切ないプロローグなのだ。ミステリーとしての面白さはもちろん、青山先生が大切にする『名探偵コナン』の真髄、新一と蘭の絆の原点を本作で堪能してほしい。

◼️放送情報
『名探偵コナン エピソード“ONE” 小さくなった名探偵』
日本テレビ系にて、月16日(金)21:00〜22:54放送
声の出演:高山みなみ、山口勝平、山崎和佳奈、小山力也、緒方賢一、堀之紀、立木文彦、林原めぐみ
原作:青山剛昌
監督:山本泰一郎
音楽:大野 克夫
©︎青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 2016

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