中村雅俊にとっての『俺たちの旅』とは? 小椋佳の楽曲とともにあった“青春の旅路”

また同時期、『俺たちの旅』シリーズにおける決定的な重要作も制作されていた。1995年に放送されたスペシャルドラマ『俺たちの旅 二十年目の選択』(日本テレビ系/以下『二十年目の選択』)では、カースケと洋子(金沢碧)の決別が描かれる。“野郎3人”の若者にフォーカスが当てられていた初期作から20年、否応なく直面せざるをえない「家族」の問題をめぐって1組の男女に別れが訪れていた。

だから「君が開く扉の向こうに」は『俺たちの旅』、あるいは中村のファンにとっては時代の変化の象徴そのものだろう。時代の変化を過ごしてきたことそれ自体に抱くノスタルジーを喚起させる装置とも言うべきか。
同曲は『五十年目の俺たちの旅』において、次のような場面で登場する。中盤でカースケは真弓(岡田奈々)とともに、かつての「神楽坂の家」を訪れる。そしてオメダと真弓の母・美保の遺影に向かってある宣言をする。「家族」をめぐる決断が果たされ、カースケは車を走らせる。
「君が開く扉の向こうに」はここで再生される。運転するカースケと真弓の顔がクロスフェードで重ねられるのも示唆的だが、その意味づけはシリーズを追ってきた観客一人ひとりそれぞれの解釈に委ねられるべきだろう。
君が開いた扉(ドア)の向こうに 新しい 未来(あす)の君がいる

回想シーンが充実している本作で、特に頻出するのはやはりカースケと洋子のやりとりだ。『俺たちの旅 ~十年目の再会~』(日本テレビ系)からは、カースケが洋子に「プロポーズ」をする場面。『二十年目の選択』で洋子がカースケに「妊娠」を告げる場面。決定的なシーンにはいつもそこに相応しい音楽がともにある。
こうした音楽とともに本シリーズの世界観を作り上げてきたのはやはり小椋佳だ。メイン主題歌「俺たちの旅」をはじめ数々の楽曲を中村に提供してきた小椋の功績は、中村と『俺たちの旅』の軌跡とともにある。「俺たちの旅」「ただお前がいい」はもちろん、小椋自身の楽曲「少しは私に愛を下さい」も本編のとあるタイミングで登場する。劇場と「The 50th Anniversary 俺たちの旅 スペシャルコンサート」追加公演で、自身の追憶とともにその音楽体験を存分に味わうべきだろう。

エンディングテーマについては、鎌田が「最後はこれでもかというくらい『俺たちの旅』になります」(※)と語るように、最後には晴れやかな気分であの楽曲を迎えることができる。物語としてもある種のオープンエンドとでも言うような、50年の時を経ても続いていくかのような、彼らの青春の「進路」が示唆される。
こうした終わるともつかない浮遊感とともにある物語構造は、それ自体50年前へのノスタルジーを喚起するだろう。
参照
※2025年12月15日に行われた「『五十年目の俺たちの旅』原作本出版記念トークショーイベント」での発言より。後日、同日に行われた中村雅俊×鎌田敏夫によるインタビューをリアルサウンド映画部にて掲載予定。
■公開情報
『五十年目の俺たちの旅』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:中村雅俊、秋野太作、田中健、前田亜季、水谷果穂、左時枝、福士誠治、岡田奈々
原作・脚本:鎌田敏夫
監督:中村雅俊
主題歌:中村雅俊「俺たちの旅」
配給:NAKACHIKA PICTURES
©「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
公式サイト:oretabi50th-movie























