僕の心の羊宮妃那がヤバイ 劇場版『僕の心のヤバイやつ』で追想される“尊死”メモリーズ

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、羊宮妃那関連コンテンツはすべてCompletenessしたいと願ってやまない徳田が、劇場版『僕の心のヤバイやつ』をプッシュします。

『僕の心のヤバイやつ』

劇場版『僕の心のヤバイやつ』(以下、『僕ヤバ』)のイントロダクションには「市川視点でTVアニメシリーズを再編集」したとある。今となっては懐かしい、市川がまだ山田杏奈に「殺意」を抱いていた頃から、恋心を自覚し、山田の想いに気づき、そして結ばれるまでの過程が彼の視点を通して綴られる。
市川が捉えてきた山田の、そして人類が観測してきた羊宮妃那の思い出が卒業アルバムのように断片的に映し出されていく。
冒頭は新規映像としておねえのライブシーンから幕を開ける。おねえ=声優アーティストのレジェンド・田村ゆかりの歌唱シーンを山田=羊宮妃那が目撃する場面には、大いなる歴史を見出さざるをえない。あるいは曲中に差し込まれる、ギターヘッドからボディを捉えたアングルからは『BanG Dream! Ave Mujica』第13話で披露された「聿日箋秋」を想起しないわけにはいかない。
『僕ヤバ』も部分的に「バンドアニメ」と化したことで(?)、田村たちが紡いできた声優アーティストの通時性、そして同時代の音楽アニメブームの共時性、この2つの中心に羊宮妃那がいることを改めて実感する。市川が語る山田杏奈の総決算を目撃することで、近年の羊宮の軌跡もまた脳裏に刻まれることになるだろう。あらゆる意味で、このおねえのライブシーンは見逃せない。
なお作中では、同ライブシーンで披露された楽曲の作詞は市川が担当したことになっている。どうして市川が作詞を手がけることになったのか、そのいきさつを「回想」することで山田との思い出もシームレスに追想されていく。

すぐに思い出されるのは意外な人物、ナンパイだ。彼がまだ在校生だった頃、とある日の登校中に山田に接近する。山田の連絡先を聞き出そうと迫るナンパイだが、山田はそれを頑なに拒否する。必死で距離を置こうとする山田だが、「山田さんって意外とおもしろいよね」と言われるとコロッと近づいてしまう。「『おもしろい』が最高の褒め言葉なのかよ!」と市川が(脳内で)ツッコむように、ギャグで処理されるくだりではありつつも、直後に山田が「市川っておもしろいね」と告げる場面の前振りとしても機能している(「最高の褒め言葉」を市川に与えている)。
あるいは後日、山田のほうから市川の連絡先を聞き出す場面も登場する(市川はすでにナンパイより心を開かれている)。このような対比的反復によって山田と市川の距離感を描写する展開は『僕ヤバ』では頻出しており、物語の圧縮によってこの反復を見つけやすくなっていることも総集編の利点だろう。



















