ムロツヨシのコメディと哀愁はなぜ心に残る? 『うち弁』で証明された俳優としての強度

ムロツヨシのコメディと哀愁はなぜ心に残る?

 2023年10月期にフジテレビ系で放送された『うちの弁護士は手がかかる』(以下、『うち弁』)のスペシャルドラマとなる『うちの弁護士はまたしても手がかかる』(以下、『うち弁 SP版』)が、1月4日21時よりフジテレビ系で放送される。前作に引き続き、超敏腕芸能マネージャーだったがパラリーガルとなった主人公・蔵前勉役で主演を務めるのがムロツヨシだ。

『うちの弁護士はまたしても手がかかる』©︎フジテレビ

 『うち弁』は、ムロ演じる蔵前と超エリートだがコミュニケーションが苦手で不器用なポンコツ新人弁護士・天野杏(平手友梨奈)を中心に、個性豊かな登場人物たちが織りなす、リーガルエンターテインメント。前職で超敏腕芸能マネージャーとしてトップ女優を育て上げた蔵前は、仕事をこなしながら杏をおだてて仕事に向かわせ、杏が依頼人と衝突しそうになれば間に入り、パラリーガルとなってもその手腕を発揮。次第に2人の掛け合いはコメディ色を帯びていった。一方で蔵前の大人であるがゆえの苦悩や孤独感を感じさせるシーンや、杏と蔵前の大人気ない喧嘩も描かれるなど、笑い、泣かされ、また笑う、回を追うごとに引き込まれるドラマとなっていった。

 2025年のムロは、福田雄一監督作の『アンダーニンジャ』と現在公開中の『新解釈・幕末伝』に出演。独特の間やテンポを生かしたコメディで存在感を見せていた。また、2025年は“やりたい役者、脚本家とやりたいことをやる”をコンセプトとした舞台シリーズ『muro式.』を4年ぶりに開催し、本多力、大西礼芳を迎えて4月から6月にかけ、5都市で公演。“演劇人”としても精力的に活動した。

『新解釈・幕末伝』©︎2025 映画「新解釈・幕末伝」製作委員会

 ムロの代表作といえば『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレ東系)や『新解釈・幕末伝』をはじめとした福田監督作が真っ先に思い浮かび、“おもしろおじさん”という言葉が似合ってしまうほどコメディのイメージが強い。しかし彼には、『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)などで見られるように、どこか情けなさを抱えたおじさん像を説得力をもって体現できる強みもある。『うち弁』はその両方が楽しめる、つまりムロの持ち味をいいとこ取りした作品だといってよい。

『うちの弁護士はまたしても手がかかる』©︎フジテレビ

 パラリーガルになる前の蔵前は30年間も笠原(吉瀬美智子)を支え、「世界進出」を目標に二人三脚で取り組んできた。笠原が物腰の柔らかい、スタッフからも好かれるような人物だったら良かったのだが、残念ながらそうではなく、蔵前は笠原や彼女に関わる人々がとにかく嫌な思いをしないで済むようにひたすら心を砕いてきた。その過程でいろいろな人に振り回されてもヘラヘラしている様子は、一般的にイメージされるような“仕事がデキる人”ではなく“情けないおじさん”である。しかも、夢の実現まであと少し、というところで蔵前は笠原に解雇宣言されてしまう。

 杏は蔵前のつい相手を優先してしまう性分を見抜いたかのようにワガママ放題。普通の人であれば、子どもっぽい杏を見捨てることも考えただろうが、蔵前は杏を弁護士として頼ってきている人や杏が人として一人前になることを優先し、いたるところに奔走した。蔵前のはカッコよさは、プライドよりも最終的な結果を優先して、どんな仕事もやってのけるところにある。最終的には、その誠実さが杏にも周囲にも伝わり、蔵前と杏は唯一無二の“バディ”となっていく。

『うちの弁護士はまたしても手がかかる』©︎フジテレビ

 そんな『うち弁』が悲壮感あるドラマにならないのは、“おもしろおじさん”としてのムロの力やそれにうまく乗っかって団体芸を繰り広げる香澄法律事務所のメンバーを演じる戸田恵子、酒向芳、松尾諭、村川絵梨、日向亘らの力がある。

 『うち弁 SP版』では、大人気弁護士・樋口新(木南晴夏)と手を組むことになる蔵前。相手を睨みつけるように見つめる樋口の表情は、相手を警戒している杏のことを思い出させる。きっと蔵前には大きな試練が待っているのだろう。クセのある女を引き寄せ、振り回されてしまう蔵前は今度はどんな物語を見せてくれるのだろう。今から放送が楽しみだ。

■放送情報
『うちの弁護士はまたしても手がかかる』
フジテレビ系にて、1月4日(日)21:00~23:39放送
出演:ムロツヨシ、木南晴夏、吉瀬美智子、菅野莉央、日向亘、入山法子、東根作寿英、本多力、早瀬憩、安達祐実、村川絵梨、松尾諭、時任三郎(ナレーション)、酒向芳、戸田恵子
脚本:中園勇也
音楽:川井憲次、fox capture plan
プロデュース:金城綾香
制作プロデュース:森田美桜、大古場栄一
演出:相沢秀幸、下畠優太
制作協力:AOI Pro.
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/uchiben_returns/
公式X(旧Twitter)https://x.com/uchiben_kin9_cx
公式Instagram:https://www.instagram.com/uchiben_kin9_cx/?hl=ja

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