今田美桜×北村匠海コンビが再び 『あんぱん』総集編を機に振り返る朝ドラの夫婦像

『あんぱん』を機に振り返る朝ドラ夫婦像

 主人公・のぶ(今田美桜)は、父に「おなごも大志を抱け」と言われて育ち、高知では「ハチキンおのぶ」と呼ばれるほど男まさりな性格だった。実際、モデルとなった小松暢は、高知新聞社の戦後初の女性記者であり、東京で代議士の秘書をしていたという人物だ。今までの朝ドラに登場した「支える妻」よりも、自分自身が「何者かになりたい」と考えていた女性のように思われる。

 しかし、物語後半で、柳井嵩(北村匠海)と結婚したのぶは、だんだんと意気消沈していく。売れない漫画家である嵩を支えるべく仕事をしているのだが、それもいつしか辞めることになってしまう。嵩が忙しくなるほど、のぶの気持ちは追い詰まっていく。そして、「頑張ったつもりだったけど、何者にもなれなかった」と吐露するのだ。

 そのセリフには、視聴者から多くの共感が集まったと聞く。作者の中園ミホは、この反響に対して、近著でこう綴っている。

「今、40~60代くらいの女性の方も、『腰掛けOL』という言葉が残っていた頃の世代かと思います。夢を持って社会に出て、『何者かになろう』としていても、結婚や出産、子育てのために、キャリアを中断、あるいは諦めざるを得なかった人が多かった時代です」(『60歳からの開運』)。

 中園は、夫を支える妻の「内助の功」を決して美談にはしない。そこには夢を断ち切られた女性たちの忸怩たる思いがあるのだということを垣間見せた。その点で『あんぱん』は、今の中年以降のリアルな夫婦の現在地を見せてくれた作品だと言えるのかもしれない。

参照
※  https://www.nikkei.com/article/DGXDZO04858410Z20C10A3BE0P01/

■放送情報
NHK連続テレビ小説『あんぱん』総集編
NHK総合・BSプレミアム4Kにて、12月30日(火)放送
第1回:07:20~08:04
第2回:08:04~08:48
第3回:08:48~09:32
第4回:09:32~10:16

NHK連続テレビ小説『あんぱん』特別編
NHK総合・BSプレミアム4Kにて、12月30日(火)10:22~11:22放送

出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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