『あんぱん』MVPは間違いなく八木信之介=妻夫木聡 物語を動かす“要”としての重み

『あんぱん』MVPは八木信之介=妻夫木聡

 半年にわたって放送されてきた朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)が、ついに終わってしまった。まさに“ロス状態”に陥っている視聴者は少なくないことだろう。多くの人々が、このドラマから愛と勇気について学び、日々の活力を得ていたはずである。そんな本作の後半パートを盛り上げたのが、八木信之介という人物。ここでは彼を好演した妻夫木聡に焦点を当ててみたい。

『あんぱん』写真提供=NHK

 本作は『アンパンマン』の生みの親となった夫婦をモデルに、ヒロイン・のぶ(今田美桜)と、その夫である柳井嵩(北村匠海)の激動の生涯を描いたもの。八木が初登場したのは第50話からで、物語が“戦争パート”へ突入するタイミングだった。“八木上等兵”は姿を現すなりいきなり嵩を怒鳴りつけ、急な展開を前に息が詰まったものである。そう、妻夫木は『あんぱん』の世界がガラリと変わったことを私たちに知らしめる存在だったといえるだろう。以来、“妻夫木聡=八木信之介”は本作において重要な存在であり続けた。

 では、どのように重要であったのか。その大きなポイントとしては、八木が嵩のみならず、のぶたちとも特別な関係を築き上げていったことがまず挙げられる。終戦後に嵩と再会した八木は、やがて自らの会社を立ち上げ、柳井嵩という作家が世に出ていくのを後押しした。彼の存在がなければ、私たちの知る柳井嵩は存在しなかっただろう。最重要人物のひとりだといってもいいくらいだ。

『あんぱん』写真提供=NHK

 しかし、八木が『あんぱん』において重要な存在であった最大のポイントは、いまドラマ全体を振り返ることでようやく見えてくる。彼は初登場時から最終回まで、戦争に苦しめられてきた人物だった。そのことを私たちは知っているだろう。もちろん、戦争というものに自分の人生が翻弄されたのは彼だけではない。嵩が描く作品は、彼の戦争体験が強く関係していることを私たちは知っている。けれども最後の最後まで、あの戦争がどんなものであったのかを語り続け、ストレートに訴え続けた人物としては、八木が最たる存在だろう。

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