『ザ・スタジオ』は何部門受賞する? フレッシュさに欠ける第77回エミー賞主要部門を予想

現地時間9月14日に授賞式が行われる第77回エミー賞。アメリカのテレビ業界最大の権威でありお祭りのはずなのに、実際のところ全く盛り上がっていない。昨年は『SHOGUN 将軍』の席巻があったので日本でも話題になったが、今週末に授賞式が行われると知っている人はどれだけいるだろうか。その理由はいくつかある。2023年のWストライキの影響を受け作品数が少ない。インフレで人件費が高騰し、ハリウッド(ロサンゼルス)での撮影が減った。ドラマ部門、コメディ部門ではおなじみのドラマのおなじみのキャストがノミネーション枠を埋める……。そんな業界概況を受け、ノミネーションにも気概が感じられない。せめてノミネーションの偏りを是正しないと、なあなあの「内輪イベント」に成り下がってしまう。
そんな中で、誇張ではなく業界内高視聴率を誇る『ザ・スタジオ』が最大の注目作品であるのは明らか。映画業界あるあるエピソードに著名人が本人役で登場する『ザ・スタジオ』は、2024年に『一流シェフのファミリー・レストラン』が記録した、コメディ部門における単年度の最多記録の23ノミネートと並んでいる。先週末授賞式が行われたクリエイティブ・エミー賞では9部門を受賞、さらに何部門追加するかに注目。最多ノミネート作品は『セヴェランス』の27ノミネート、リミテッドシリーズでは、『THE PENGUINーザ・ペンギンー』が今年最多の24ノミネートを獲得。「フレッシュさに欠ける」とノミネーションに苦言を呈したが、今年の投票者数は史上最多だという。それならば予定調和ではない結果もありえるかもしれない。今年も主要部門を予想してみたい。
★=本命 ⚫︎=次点 ▲=サプライズ
ドラマ部門作品賞

★『セヴェランス』シーズン2(AppleTV+)
『ザ・ディプロマット』シーズン2(Netflix)
『キャシアン・アンドー』シーズン2(ディズニープラス)
『ホワイト・ロータス / 諸事情だらけのリゾートホテル』シーズン3(HBO/U-NEXT)
『THE LAST OF US』シーズン2(HBO/U-NEXT)
⚫︎『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』シーズン1(HBO/U-NEXT)
⚫︎『パラダイス』シーズン1(ディズニープラス)
『窓際のスパイ』シーズン4(AppleTV+)
最多ノミネートを誇る『セヴェランス』が作品賞と予想。ERの1日を1時間ずつ描く『ザ・ピット』も新シリーズとして人気を博し、シーズン2も決定している。『THIS IS US/ディス・イズ・アス』のダン・フォーゲルマンがランダル役のスターリング・K・ブラウンとともに作った『パラダイス』はかなりの変化球。この設定を飲み込めるかどうかでドラマ視聴の楽しみ方が変わってくる。著しく失速した『ホワイト・ロータス』は、フランスを舞台にする次のシーズンで雪辱を。
コメディ部門作品賞

『アボット・エレメンタリー』シーズン4(ディズニープラス)
『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン3(FX/ディズニープラス)
『マーダーズ・イン・ビルディング』シーズン4(Hulu/ディズニープラス)
『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』シーズン6(FX/日本未上陸)
★『ザ・スタジオ』シーズン1(AppleTV+)
『シュリンキング:悩めるセラピスト』シーズン2(AppleTV+)
『Hacks(原題)』シーズン4(HBO)
『こんなのみんなイヤ!』シーズン1(Netflix)
『ザ・スタジオ』一択。現在配信中のシーズン4で持ち直したが、メンタルヘルス問題に舵を切った『一流シェフのファミリーレストラン』シーズン3は評判が悪く、昨年サプライズ受賞した『Hacks』も、マット・レミック(セス・ローゲン)の躍進には敵わない。
リミテッドシリーズ部門作品賞

⚫︎『アドレセンス』(Netflix)
★『THE PENGUINーザ・ペンギンー』(HBO/U-NEXT)
『モンスターズ:メネンデス兄弟の物語』(Netflix)
『人生の最期にシたいコト』(ディズニープラス)
『ブラック・ミラー』(Netflix)
友人を殺害した罪で身柄拘束された13歳の少年の周辺を1話ワンカットで描く『アドレセンス』は配信開始当初こそ話題を集めたが、忘れ去られるのも早かった。『バットマン』IPの強さと、クリエイティブ・エミー賞でも8部門を受賞した『THE PENGUINーザ・ペンギンー』に勝機があると予想。
ドラマ部門主演女優賞

★キャシー・ベイツ『マトロック』(Paramount+)
★ブリット・ロウアー『セヴェランス』(AppleTV+)
ベラ・ラムジー『THE LAST OF US』(HBO/U-NEXT)
ケリー・ラッセル『ザ・ディプロマット』(Netflix)
シャロン・ホーガン『バッド・シスターズ』(Apple TV+)
大御所キャシー・ベイツを追う、『セヴェランス』のブリット・ロウアー。フレッシュな魅力でロウアーが多少有利か。逆にこの2人以外が受賞する確率は限りなく低い。
ドラマ部門主演男優賞

★アダム・スコット『セヴェランス』(AppleTV+)
★ノア・ワイリー『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』(HBO/U-NEXT)
ペドロ・パスカル『THE LAST OF US』(HBO/U-NEXT)
スターリング・K・ブラウン『パラダイス』(ディズニープラス)
ゲイリー・オールドマン『窓際のスパイ』(Apple TV+)
昨年の主演男優賞受賞者・真田広之が読み上げるのは、『セヴェランス』のアダム・スコットか、『ザ・ピット』のノア・ワイリーか。新ドラマで唯一話題に上がる『ザ・ピット』のロビー先生が少々リードしているように思う。
コメディ部門主演女優賞
クインタ・ブランソン『アボット・エレメンタリー』(ディズニープラス)
★アヨ・エデビリ『一流シェフのファミリーレストラン』(FX/ディズニープラス)
クリステン・ベル『こんなのみんなイヤ!』(Netflix)
★ジーン・スマート『Hacks(原題)』(HBO/日本未上陸)
ウゾ・アドゥバ『ザ・レジデンス』(Netflix)
ジーン・スマートとアヨ・エデビリの一騎打ち。監督賞にもノミネートされているシドニーを応援したいが、おそらくスマートの牙城は切り崩せないのではないだろうか。
コメディ部門主演男優賞

ジェレミー・アレン・ホワイト『一流シェフのファミリーレストラン』(FX/ディズニープラス)
マーティン・ショート『マーダーズ・イン・ビルディング』(ディズニープラス)
アダム・ブロディ『こんなのみんなイヤ!』(Netflix)
ジェイソン・シーゲル『シュリンキング:悩めるセラピスト』(AppleTV+)
★セス・ローゲン『ザ・スタジオ』(AppleTV+)
マット・レミック一択。そのほかはあり得ません。セス・ローゲンがスピーチで誰に感謝を述べるか、その人選に注目しましょう。
リミテッドシリーズ/TV映画部門主演女優賞
⚫クリスティン・ミリオティ『THE PENGUINーザ・ペンギンー』(HBO/U-NEXT)
⚫︎ミシェル・ウィリアムズ『人生の最期にシたいコト』(FX/ディズニープラス)
⚫︎ケイト・ブランシェット『ディスクレーマー 夏の沈黙』(AppleTV+)
ミーガン・フェイヒー『セイレーンの誘惑』(Netflix)
ラシダ・ジョーンズ『ブラック・ミラー』(Netflix)
クリスティン・ミリオティ、ミシェル・ウィリアムズ、ケイト・ブランシェットの誰が獲ってもおかしくない。逆にいうと決め手にかける。余命宣告された女性が性的快楽を追求する『人生の最期にシたいこと』の原題は『Dying for Sex』で、「死ぬ」と「死ぬほど」のダブルミーニングになっている。得てして邦題が惜しいディズニープラス!
リミテッドシリーズ/TV映画部門主演男優賞

★コリン・ファレル『THE PENGUINーザ・ペンギンー』(HBO/U-NEXT)
⚫︎スティーヴン・グレアム『アドレセンス』(Netflix)
クーパー・コック『モンスターズ:メネンデス兄弟の物語』(Netflix)
ブライアン・タイラー・ヘンリー『ドープ・シーフ』(AppleTV+)
ジェイク・ギレンホール『推定無罪』(AppleTV+)
殺人罪で身柄拘束される少年の父親を演じたスティーブン・グレアムが主演男優賞で、少年役オーウェン・クーパーが助演にそれぞれノミネートされている。逆じゃないの……と思うが、より勝てる場所で勝負に出る“カテゴリー詐欺(Category Fraud)”はNetflixのお家芸。特殊メイクがすごすぎてファレルの顔を見た覚えはないが、受賞はペンギンに。




















