2025年の年間ベスト企画
平井伊都子の「2025年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 韓国エンタメにハリウッドの病が感染

第3位の『I LOVE LA』は、『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』や『ボトムス 最底で最強?な私たち』のレイチェル・セノットがショーランナーを務め、LAでエンターテインメントビジネスに携わる20代の生態を描く。セノット演じるマイアの親友で、自由奔放なくせに気にしいのタルーラ役のオデッサ・アザイオンに注目を。近日公開の『マーティ・シュプリーム 世界をつかめ』にも出演、アザイオンのハスキーボイスと自由な前髪にノックアウトされることでしょう。エピソード監督は、『ハスラーズ』のローリーン・スカファリア。同じくエピソード監督で観るなら、第10位の『チェア・カンパニー』。『顔を捨てた男』のアーローン・シンバーグが不条理クリンジコメディに妙なリアリティをもたらす。プレゼン中に椅子が壊れて大恥をかかされた中間管理職が椅子を販売した会社について調べ始めると……という基本的骨子を裏切り続ける展開が待っている。

小さな出来事が大きな陰謀に導かれていくという意味では、第4位の『プルリブス』にも近いかもしれない。『ブレイキング・バッド』『ベター・コール・ソウル』と大傑作を生み出したヴィンス・ギリガンの新作は、ニューメキシコ州の乾いた空気とプエブロ風建築を捉える撮影と美術がお見事。Apple TVの高画質を活かした眼福ドラマでもある。

韓国映画・ドラマ界にもハリウッドの病が感染。『イカゲーム』『パラサイト 半地下の家族』などがもたらした韓国ブームに乗っかった外資OTTがクリエイターと作品を買い漁った結果、製作費が高騰し市場が空洞化。薄味の似たようなドラマばかり氾濫する結果となってしまった。その中でも、ここに挙げた4本はクリエイターの企画意図がラストまで貫かれている作品だった。2022年に韓国ドメスティックOTTのWavveがオリジナル作品として作った『弱いヒーロー』は、資金難でS2からNetflixにお引越し。“空虚な目”を演じさせたら、パク・ジフンの右に出る俳優はいない。『おつかれさま』のIUと『未知のソウル』のパク・ボヨンは、同一作品内で2役を演じ分け、韓国俳優の胆力を感じる名演を見せた。
北米アワードで健闘中のパク・チャヌク監督の『しあわせの選択』のように、『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』も、数十年間まじめに働いてきた中年男性が突如強いられる第2の人生を描く。業界再編、働き方改革、そこまできているAI侵略……主人公たちを悩ます辛い現実は、現在のハリウッドや韓国映画界が直面しているものだ。2025年、これらの作品に惹かれたのは偶然ではないのだろう。
参照
※ https://apnews.com/article/studio-seth-rogen-tv-show-52762ef0f06d28099924fecb020eabb9






















