木村拓哉という“プロフェッショナル” 『マスカレード・ナイト』などから読み解く仕事人像

木村拓哉の“仕事人像”を過去作から紐解く

 12月27日、フジテレビ系『土曜プレミアム』枠で、映画『マスカレード・ナイト』(2021年)が地上波初放送される。東野圭吾の人気小説シリーズを映画化した本作は、興行収入46.4億円を記録した『マスカレード・ホテル』に続くシリーズ第2弾だ。

 舞台は、大晦日のホテル・コルテシア東京。未解決殺人事件の犯人が、年越しの仮装パーティー「マスカレード・ナイト」に現れるという密告状をきっかけに、警視庁捜査一課の刑事・新田浩介(木村拓哉)が再びホテルへ潜入する。タイムリミットは24時間。参加者500人全員が仮面を被った会場で、新田はホテルマンとして振る舞いながら、正体不明の犯人を追っていく。

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 前作ではフロントクラークだった山岸尚美(長澤まさみ)が、今回はコンシェルジュとして再登場。立場は変わっても、「お客様が第一」というホテルマンとしての矜持は揺るがない。一方、新田の刑事としての信条は「犯人逮捕が第一」。そんな2人が、時にはぶつかり合い、時には互いをリスペクトしながら、それぞれの立場で事件に向き合っていく。

 そう考えると、『マスカレード・ナイト』はミステリーというより、刑事とホテルマンという異なる職業が交差する、プロフェッショナル同士の物語と解釈することもできる。そしてこの「プロフェッショナル」という言葉こそが、木村拓哉という俳優を捉えるうえで、もっとも的確なキーワードなのではないか。

 『あすなろ白書』(1993年/フジテレビ系)、『若者のすべて』(1994年/フジテレビ系)、『ロングバケーション』(1996年/フジテレビ系)……。1990年代の彼は、青春ドラマの中心に立ち続けてきた存在だった。しかし2000年代に入ると、その役割はガラリと変わる。2000年から2005年までの主な作品をリストアップしてみよう。

『ビューティフルライフ』(2000年/TBS系)/美容師
『HERO』(2001年/フジテレビ系)/検事
『GOOD LUCK!!』(2003年/TBS系)/パイロット
『プライド』(2004年/フジテレビ系)/プロアイスホッケー選手
『エンジン』(2005年/フジテレビ系)/レーシングドライバー

 キムタクが体現するのは、職務の最前線に立ち、技術や判断を積み重ねることで、プロフェッショナルとしての責任を全うする人物だ。そして2007年以降になると、彼が引き受ける役割はさらに拡張されていく。

『華麗なる一族』(2007年/TBS系)/銀行員・企業人
『CHANGE』(2008年/フジテレビ系)/内閣総理大臣
『MR.BRAIN』(2009年/TBS系)/脳科学者
『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(2010年)/戦艦艦長
『南極大陸』(2011年/TBS系)/南極観測隊リーダー

 ここで描かれるのは、判断の結果が個人を超え、組織や国家、集団全体に影響を及ぼす立場。だが木村拓哉が演じるキャラクターは、集団の論理を理解したうえで、それでもなお自分なりの倫理や正義を手放さず、制度と摩擦を起こし続ける。そしてここ10年間の作品になると、職業倫理そのものが人物の輪郭になっていく。

『A LIFE〜愛しき人〜』(2017年/TBS系)/外科医
『BG〜身辺警護人〜』(2018年・2020年/テレビ朝日系)/ボディガード
『グランメゾン東京』(2019年/TBS系)/フレンチシェフ
『教場』(2020年/フジテレビ系)/警察学校教官
『未来への10カウント』(2022年/テレビ朝日系)/高校ボクシング部監督
『Believe-君にかける橋-』(2024年/テレビ朝日系)/建設エンジニア

 木村拓哉のアクターとしての歩みは、真のプロフェッショナルへの軌跡と同義語だと言っていい。彼の人物像を貫いているのは、一時的な感情ではなく、役割を引き受ける者としての判断と責任感だ。

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