2025年の年間ベスト企画
今祥枝の「2025年 年間ベスト海外ドラマTOP10」 ポスト・ハリウッド時代のリアリティ

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2025年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、海外ドラマの場合は、2025年に日本で放送・配信された作品(シーズン2なども含む)の中から、執筆者が独自の観点で10作品をセレクト。第7回の選者は、映画・海外ドラマライターの今祥枝。(編集部)
1.『ローダウン 独自調査ファイル』(ディズニープラス)
2.『エイリアン:アース』(ディズニープラス)
3.『TASK / タスク』(U-NEXT)
4.『交渉の技術』(Lemino)
5.『アドレセンス』(Netflix)
6.『広場』(Netflix)
7.『奥のほそ道』(U-NEXT)
8.『へヴェリウス』(Netflix)
9.『ザ・スタジオ』(Apple TV)
10.『ザ・ピット / ピッツバーグ救急医療室』(U-NEXT)
ハリウッドも韓国も、本国の映像業界そのものに関しては暗澹たる気持ちになるニュースが目立った1年だった。それと直接関係する部分も多少はあるものの、私が知る範囲で目にした一部メディアの凋落ぶりには、「まだ堕ちる余地があるのか」と辟易させられた。じゃあ何もかもが悲惨な1年だったのかと言えば、個人的に仕事の面では、近年で最も面白く、興味深い経験ができた年でもあった。
全体としては、ベスト10の選考理由も含めて2024年に書いた内容と大筋は変わらない。「OTT全盛時代に世界がワンマーケットになることのリアリティ」「ハリウッド一強ではいられない必然性」、そして「王道、あるいは原点回帰」。それらがさらに進行した状態として映ったのが2025年だった。正直なところハリウッドに限って言えば、作品以上に業界ウォッチングが面白かったのだが、幸いにも取材を通して、韓国で映画業界からTV産業へ進出した新興スタジオ(ディズニープラス)やスペインを拠点に欧州全域を視野に入れる戦略(Amazon)、さらにインドやタイで映画・TV製作に携わる人々に話を聞く機会を得たことで、「世界は相互作用している」という現状を実感できた。端的に言えば、どこかが沈めば、別のどこかが浮上するということだ。
世界的に見ると、ローカル発の秀作が本国で大ヒットする例は急増している。これをハリウッドの弱体化と捉えるか、各国の映像製作レベルが向上した、あるいはすでに何年も前から高い水準にあったものの、これまで知られる機会(作品)がなかったと捉えるか。おそらく答えはその両方だろう。個人的には、とりわけ東南アジア地域の人材への取材を通じて、「ここ数十年にわたり積み重ねてきた成果が、いよいよ世界に届き始めた」のだと感じている。韓国作品や日本のアニメ(海外ではアニメーションと区別された “アニメ”)と同様、OTTとSNSによって世界に波及するスピードは加速度的に速まっている。
一方で、ハリウッドがこれまで取ってきた戦略でもある国際共同製作は、今の時代にこそ改めて見直されている。すでに東南アジア各国のパートナーシップには目を見張るものがあり、そこに日本がどう関われるのかは、今後を考える上での重要な鍵となるだろう。ちなみに2025年は「日本発世界」といったフレーズや論調を、あきれるほど目にしたが、いつの時代の話なのかと首をひねるばかりだった。ピークジャパンであることは間違いないにせよ、そこに胡座をかけるほどの優位性があるわけでもなく、世界の潮流にどう向き合うのかというビジョンや戦略には、依然として課題が多いと感じている。

ではハリウッドはどうなのかと言えば、トランプ云々を持ち出すまでもなく、「自分たちの物語は自分たちの土地で撮る」という動きはすでに加速している。テキサス出身のテイラー・シェリダンが制度成立に尽力してきたことでも知られるテキサス州の映像作品向けインセンティブ制度を筆頭に、オクラホマ州出身のネイティブ・アメリカンのクリエイター、スターリン・ハルジョによる『Reservation Dogs』と世界観を共有する『ローダウン 独自調査ファイル』、さらに『メア・オブ・イーストタウン/ある殺人事件の真実』のブラッド・イングルスビーが手がけた『TASK / タスク』など、いずれもクリエイターの出身地や文化的ルーツに根差した作品作りによって、地元の人々からも熱狂的な支持を集めている秀作だ。とりわけカウボーイハット、白人優位、暴力が日常にある世界を描きながら、先住民の土地をめぐる物語を通じて「(男性の)繊細さこそが“強さ”である」と伝えるハードボイルドタッチかつ知的な『ローダウン 独自調査ファイル』(イーサン・ホークが素晴らしい!)には、ぐっときた。






















