『アバター:F&A』は映像美だけではない 観る者の心を揺さぶる壮大な人間ドラマに注目!

生身の俳優による生身の演技、だからこその共感
では、これらのキャラクターや彼らの感情を生み出しているのは誰か。そこで改めて、先述のパフォーマンスキャプチャーによる俳優陣の演技に話を戻したい。
本作の制作過程――全身にセンサーがついたボディスーツを着て、何もないスタジオで演技をする俳優たちの姿を見て、「映画の魔法が解けてしまう」と感じる人もいるかもしれない。しかし、事実は逆だ。
本作における「パフォーマンスキャプチャー」は、俳優のまばたき、目線の揺らぎ、口元の微細な震え、涙や息遣いさえ抽出し、パンドラの住人へと移植する技術だと言える。実際に彼らの演技と映像を照らし合わせてみると、俳優の顔が見えてくるほどの精密さだ。
ジェイクやネイティリが涙を流す時、それはCGで作られた水滴ではない。そこに映されている感情はすべて、実際にスタジオで生身の俳優が互いに演技で心を震え合わせ、本気で役に入り込んで流した涙そのものだ。だからこそ、私たちは架空の惑星の、架空の種族であるナヴィに、どうしようもなく共感してしまう。彼らの姿を目の当たりにして、自分のことのように胸が締め付けられるのは、そこに映っているのが「デジタルデータ」ではなく、紛れもない「人間」だからだ。
前作までの「人間VSナヴィ」という単純な構図を超え、本作ではナヴィ同士の対立、家族内での不協和音、そして自分自身のアイデンティティを巡る葛藤が、容赦なく描かれる。守りたいものが違うからこそ、正義がぶつかる。愛しているだけではどうにもならない選択を迫られる。それらが過去最大のエモーショナルなドラマとして展開される本作の“映像美”は、俳優たちの「嘘のない演技」があって、初めて意味を持つのだ。
「本作に生成AIによって作られたものは一つもない」
キャメロンがそう言い放ち、生身の人間によって全て作られたことを強調するこの言葉は、本作の最大の見どころを思い出させると同時に、今の、そしてこれからのハリウッドを見つめる上で大きな意味がある。
これまでの映画史において圧倒的な映像体験を誇ってきた『アバター』シリーズ。その最新作の核にあるのが、最新鋭のテクノロジーを使って、どこまでも感情や葛藤など“人間”そのものを描こうとした作り手たちの“執念”に他ならないことを心の片隅に置いて、鑑賞を楽しんでほしい。
■公開情報
『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』
12月19日(金)日米同時公開
出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、ウーナ・チャップリンほか
監督・製作・脚本:ジェームズ・キャメロン
製作:ジョン・ランドー、レイ・サンキーニ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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