綾野剛×田中麗奈が挑んだ“愛と性” 荒井晴彦の脚本は「美しくて、滑稽で、誠実」

綾野剛「最後の二人のシーンは役を一瞬超えるような“ゾーン”に」

ーー完成した映画をご覧になった時の感想はいかがでしたか?
田中:観たことのない、本当に文学的な作品でした。音楽も素晴らしくて、昭和の香りが漂う中で矢添さんの背中が映っているシーンには、すごい哀愁があって。「すごいものを観たな」という感覚を受けました。

ーー現場でもモノクロの映像は確認されていたのですか?
田中:はい、モニターで見せていただいていたので。私は(ロケ地が)公園とバーとタクシーの中とお部屋という感じだったので、お部屋の雰囲気もすごく素敵でした。1969年という時代を生きる上で、その時代の映画を見たり、当時の女性の社会的立ち位置を考えたりしながら、千枝子の生きてきた道を想像して演じました。

ーー千枝子にとって矢添さんはどんな存在だったのでしょう?
田中:真夜中の暗い海を照らす「月」みたいな存在でした。すごい光だったんです。矢添さんの言葉の一つ一つが、千枝子にとっては「ときめき」なんですよね。千枝子という人生の映画のエンドロールでは、矢添さんは最初の方に出てくる人。でも矢添さんにとっては、自分は最後の方なのかな……と思ったりするのが、切なかったですね。

ーー綾野さんは、田中さんの千枝子のお芝居を受けていかがでしたか?
綾野:最高でした。矢添自身は、実はどこかで全部答えが分かっている人なんです。だからこそ、その行方の先を千枝子に照らしてもらった感覚があります。田中さんからこぼれ落ちる一雫を、矢添がキャッチできなくても、僕は絶対キャッチしなきゃいけない。そんな狭間で生きていました。特に最後の二人のシーンは、役を一瞬超えるような「ゾーン」に入っていて、とても緊張したんです。きっと矢添自身も緊張していたんだと思います。あんなに言葉を扱っている人間が、言葉を上手に話せない状態になって、反復してしまったり、「ノッキング」を起こしてしまったりする。動物的回路としては正しい反応なんだけど、それを理屈で制御しようとして、さらにこじらせている。あそこだけが、唯一彼が見せた理屈に対する「裏切り」だったような気がします。「あ、彼はやっぱり人間なんだな」と。自分の中で一番腑に落ちた瞬間でした。
■公開情報
『星と月は天の穴』
12月19日(金)テアトル新宿ほか全国ロードショー
出演:綾野剛、咲耶、岬あかり、吉岡睦雄、MINAMO、原一男、柄本佑、宮下順子、田中麗奈
脚本・監督:荒井晴彦
原作:吉行淳之介『星と月は天の穴』(講談社文芸文庫)
撮影:川上皓市、新家子美穂
照明:川井稔
録音:深田晃
美術:原田恭明
装飾:寺尾淳
編集:洲﨑千恵子
音楽:下田逸郎
主題歌:松井文「いちどだけ」ほか
写真:野村佐紀子、松山仁
製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
©2025「星と月は天の穴」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/hoshitsuki_film/























