『ザ・ロイヤルファミリー』は制作自体が“ドラマ”だった 加藤Pが最終回に込めた“継承”

12月14日に最終話<拡大SP>を迎える日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)では、妻夫木聡演じる栗須栄治や目黒蓮演じる中条耕一らチームロイヤルが競走馬のロイヤルファミリーとともに、悲願の有馬記念制覇に挑む。最終話の放送を前に、加藤章一プロデューサーにドラマの見どころを聞いた。
妻夫木聡の演技力によって“補完”された原作からの脚色

ーーこれまでの放送を振り返って感想と手応えを教えてください。
加藤章一(以下、加藤):企画したのがかなり前なので、最終回を迎えられて安心しています。いろいろ第1話から振ってきたものの答えを最終話にまとめているので、観てよかったと思っていただけると嬉しいですね。

ーー特に印象的だったシーンは?
加藤:早見和真先生の原作が素晴らしいので、踏襲して作っています。原作にあるシーンはそこにお手本が書いてあるのですが、原作にはないけれどやりたかったシーンがいくつかありました。一つは第1話で耕造(佐藤浩市)が栗須(妻夫木聡)を自分の秘書になるよう誘う競馬場のシーンです。原作は店での食事でしたが、ドラマチックにしたかったのでレース後に変更させていただきました。似たようなところで、第3話で耕造が野崎ファームで馬のロイヤルホープを購入する場面があります。「乗らせろよ、あんたの夢に」と言うシーンが僕はすごく好きなんですけど、あれは原作にないんですよ。原作だと耕造と剛史(木場克己)のやり取りはあえて描かれてないんです。このシーンは映像化したいと思ってやりました。セリフ量も多くて難しいと感じましたが、相談しながらうまくできたと思うので、自分の中で印象に残っています。

ーー撮影を通して感じた妻夫木聡さんの魅力を教えてください。
加藤:妻夫木さんは、僕が関わった中でもっとも素敵な主役の一人だと思っていて、ご本人も作品自体をどうするかをすごく考えておられました。出演者としてはもちろん、スタッフとしても、僕も相談させていただきましたし、妻夫木さんからもご相談いただきました。その上で、お芝居も素敵な解釈で、栗須というキャラクターを作り上げてくださったので、本当に感謝しています。原作で栗須はストーリーテラーで読者に近い立ち位置ですが、映像化に際して、早見先生に変えさせてほしいとお願いしました。あまり原作と違っても他の解釈がずれてきますし、僕らが心配していた部分を妻夫木さんに補完してバランスを取っていただきました。
期待を超えた目黒蓮と作品のテーマを背負った佐藤浩市

ーー後半の“主役”となった目黒蓮さんはいかがでしょう。
加藤:目黒さんに関しては、最初はナレーションで、途中からチームに参加するのはすごく大変なんですよね。二部構成で役者さんが交代するドラマはあると思うんですけど、出来上がったチームに入って、耕造という大きなキャラクターが抜けた後を背負うプレッシャーはあったと思います。でも、それを表に出さず、緊張したそぶりも見せずに、いつも通りやってくれたことにとても感謝しています。僕が言うのはおこがましいですが、ご一緒させていただいた『トリリオンゲーム』(TBS系)や映画『わたしの幸せな結婚』から、今作で役者さんとしてさらに成長されたと思います。お芝居の仕方も浩市さんや妻夫木さんを見ていたと思いますし、現場のたたずまいやスタッフ、キャストの接し方がすごく変わったなと感じました。目黒さんならやってもらえると確信してお願いしていますが、期待を超えていただけて嬉しかったです。
ーーそして、佐藤浩市さんも流石の存在感でした。
加藤:浩市さんに関しては、耕造のような昭和気質の経営者のイメージとはかけ離れた、本来はカッコよくてスマートでクレバーな方です。そんな浩市さんに演じていただき、キャラクターが広がりました。クランクイン前の打ち合わせで、浩市さんからいただいたアイデアがありました。一つは、第1話で耕造が話す「馬は自分が勝ったかわかっているか」という問いかけで、耕造が「俺はわかっていると思う」と話すシーンがありましたよね。あれは浩市さんのアイデアをいただいています。「こういうふうに俺は思うんだけど、話の中で使えないかな」とご提案いただき、とても良いと思ったので使わせていただきました。もうひとつは有馬記念を目指すこと。これは原作と同じですが、競走馬はだいたい日本ダービーを目指すんですよ。3歳馬で日本ダービーというのが一番重要なレースで、なぜ耕造は最初から有馬記念を目指すのかに関して、元々競馬に詳しい浩市さんは不思議に思われていました。早見先生からもご意見をいただくなかで、ドラマに落とし込むために何かないかとなったときに、第2話の最後で耕造が語る内容は、浩市さんにご提案いただいたものです。ストーリーの根幹につながる部分でアイデアをいただき、役者としての素晴らしい演技に加えて、作品全体のテーマも陰で背負っていただいて驚きとともに感謝しています。

ーー関係者やファンの反応はいかがでしたか?
加藤:撮影現場にいらっしゃるJRAの皆さん、調教師やトレセンにいらっしゃる方々が、ドラマをご覧になってどんな反応をするかすごく心配していましたが、好意的に受け止めてくださいました。馬主や牧場、調教師、ジョッキー、厩務員の方々を描いた作品があまりなかったので、喜んでいただけて安心しています。ドラマ化に際して、省略したり変更した部分も好意的に受け止めていただいて、大きな批判もなく感謝していただけたのは、すごく嬉しかったです。ファンの皆さんも喜んで観てくださっていて。ドラマで取り上げるレース映像がどのレースだったか当てるのが早いじゃないですか。そういう楽しみ方もあるんだとビックリしましたし、ファンの皆さんが詳しすぎて、最初に知っていたら怖くてできなかったかもしれないと思うほどです。ドラマ放送前に解禁したポスタービジュアルでマイネルホウオウをすぐ当てられて驚いたのですが、そのこともあって、テロップに出演した馬を載せることになりました。回を追うごとに出演馬が多くなって、許可を取るのが大変になり苦労しましたが、喜んでいただけて良かったなと思いました。




















