『ばけばけ』北香那だけじゃない 朝ドラ視聴者をザワつかせたヒロインの“ライバル”たち

朝ドラに登場したヒロインの“ライバル”たち

黒島結菜

 やはりライバルには勝ち気でいてもらわなくては困る。ヒロインの成長の途上には、彼女たちのような存在が必要だ。しかしヒロイン自体が勝ち気だった作品もあるにはある。『ちむどんどん』(2022年度前期)の暢子(黒島結菜)だ。自分の思うままに人生を突っ走る彼女の姿は、とても清々しかった。が、ここではライバルの存在について述べているので、長々と語るのはやめておこう。

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 そんな暢子を演じた黒島は、『スカーレット』(2019年度後期)でライバル役を好演していた。喜美子(戸田恵梨香)と八郎(松下洸平)の陶芸家夫婦の間に割って入った、松永三津(黒島結菜)である。この強烈なキャラクターをいまでも鮮明に覚えている方は多いのではないだろうか。何せ彼女が想いを寄せる八郎は独り身ではなく、喜美子という妻がいる。しかも一日中、すぐそばに。

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黒島結菜演じる三津は、よくしゃべる。よくしゃべり、よく笑い、そして、じっと八郎(松下洸平)を見つめている。どうにも罪な存在である…

 私たち視聴者は、ヒロインである喜美子のことを幼い頃から知っていて、見守ってきた。そこへ思いがけず現れたのが三津であり、彼女が姿を見せるたびにヒヤヒヤしたものである。彼女もまた勝ち気な性格で、飄々としたキャラクターだった。そしてこれを軽快に体現してみせる黒島の存在によって、作品にスリルが生まれることとなったのだ。

八木莉可子

 視聴者をザワつかせたライバルといえば、『舞いあがれ!』(2022年度後期)の秋月史子(八木莉可子)もそうだ。ヒロイン・舞(福原遥)ののちの夫となる歌人・梅津貴司(赤楚衛二)を敬愛するファンで、自分こそが貴司の1番の理解者であると信じてやまない人物だった。彼女の登場にもヒヤヒヤしたものだ。史子は控えめな性格だが、貴司のこととなるとまるで別人になる。ヒロインサイドとしては脅威だが、それだけ貴司を想っていることは伝わってきた。そしてそんな彼女の存在が、舞と貴司の背中を押し、ふたりの関係性がより強いものとなることに貢献した。出番はごくかぎられたものだったが、作品の終盤に登場してきた重要キャラだったといえるだろう。

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 さて、このあたりで『ばけばけ』に話を戻そう。ヘブンに想いを寄せるリヨは勝ち気な性格の持ち主というわけではないし、ヒロインのトキと敵対しているわけでもない。しかし“お嬢様”である彼女は、何から何までトキとは違う。トキとヘブンの関係性が変わっていくことにおいて、リヨの存在はどう機能するのか。“潜在的なライバル”から“真のライバル”になる日がやってくるのならば、トキは自分の心の深部と向き合い、大変革が起きるはずだ。ドラマは厚みを増すことになるだろう。しかしながら現在のトキとリヨの関係を楽しく眺めている身からすると、けっこう複雑である。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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