キム・ミンハの真骨頂は“涙のシーン”に宿る 『テプン商事』『Pachinko』などの必見作

キム・ミンハの真骨頂が詰まった必見作

 短いストーリーの中に人間の温かさがギュッと凝縮された、キム・ミンハ演じるヒワンとコンミョン演じるラムの青春ファンタジードラマ『私が死ぬ一週間前』も振り返りたい。よく走ってよく食べてよく遊び、クラスの中心的存在だった高校時代とは裏腹に、大学生になったヒワンは絶望を背負って生きていた。それは、初恋相手だったラムを一緒に行った旅行で失ったからだ。その陰と陽の感じさせる演じ分けも目を引くが、一方でこの物語でのキム・ミンハの魅力は、やはり涙のシーンに詰まっている。

『私が死ぬ一週間前』©︎ TVING Co., Ltd, All Rights Reserved.

 物語は、亡くなったラムが“死神”となってヒワンの死を予告しに突然やって来るところから始まる。そして2人は、今までの空白の時間を取り戻すかのように、死ぬまでの一週間を一緒に過ごすことになる。その間に彼女は何度も、何種類もの涙を流すのだ。やっとラムと心が通じ合った時には“号泣”という言葉では言い表せない姿を見せ、ラムの母親に心のわだかまりを打ち明けた時は、息を止めている時のような苦しさと同時に安堵も表現。さらに、ヒワンがラムとの本当の別れを感じ取る時には、“泣きたくないのに涙が出てきてしまう”というヒワンの心情を鮮明に体現した。泣きすぎて過呼吸になった経験がある人もいるだろうが、それを思わせるような徐々に詰まっていく息遣いだった。

『照明店の客人たち』 © 2024 Disney and its related entities

 思い返してみると、ドラマ『照明店の客人たち』でも愛する相手に別れを告げる瞬間があった。しかし、同じ「別れのシーン」でも、筆者の記憶に残っている印象は作品ごとに全く異なっている。一体いくつの顔があるのだろう。30歳を迎えたキム・ミンハの出演作はさほど多くないものの、一つ一つの作品で確実に、丁寧に存在感を高めている。

김민하 - Valerie (ft. Amy Winehouse) [더 시즌즈-이영지의 레인보우] | KBS 250207 방송

 「キム・ミンハ」のことを調べていた時、番組で歌っている動画を見つけた。音楽が好きで歌手になることも考えたというエピソードにも納得するほど、普段の低音ボイスからは想像できない歌声と、女優の時とはまた異なる華やかさがあった。さらに『テプン商事』でも披露しているように、英語も堪能だ。もちろん彼女自身の努力と実力もあるだろうが、普段落ち着いているように見えるからこそ、何か表現をした時の自然な爆発力が人一倍あるように思う。彼女と同世代で今年活躍した俳優は多くいるが、その中でも『テプン商事』のキム・ミンハには、より一層注目したいと思わせる力があった。

■配信情報
『テプン商事』
Netflixにて独占配信中
監督:イ・ナチョン
脚本:チャン・ヒョン
出演者:ジュノ、キム・ミンハ、キム・ミンソク、クォン・ハンソル、イ・チャンフン、キム・ジェファ

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