野木亜紀子の脚本は線香花火のよう 『MIU404』に通じる『ちょっとだけエスパー』の連鎖

野木亜紀子の脚本は“線香花火”のよう

 『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系)はちょっとだけわからない。よくできたおもしろいドラマであることはわかる。でもどこに向かっているのかまだわからないのと、どういうドラマなのか説明がちょっとだけしづらい。

 公式サイトには「会社をクビになり、人生詰んだサラリーマンが“ちょっとだけエスパー”になって世界を救う!」とあり、「SFラブロマンス」とも書いてある。第4話まで終わった時点では、主人公・文太(大泉洋)が「人知れず他者を救うということは己を助けること」だと気づきはじめている。そして、嘘の夫婦を演じている(?)妻・四季(宮﨑あおい)とお互いのことを少しずつ知って近づいていく。だが、文太と四季がいい感じになればなるほど、文太に課せられた “人を愛してはならない”というルールが心配になってくる。そんなにくい仕掛けになっている。

 文太は第1話の冒頭で人生に絶望し飛び降り自殺を図った。それは彼のやっているゲームの内容だったが、ゲームが終わっても現実世界はやっぱりしんどい。もともと氷河期世代で、なんとか就職した会社の金を横領したせいでそれまでの人生が終了。家族や社会から見放され、再就職先を探していたところ、謎の会社「ノナマーレ」(「non amare」イタリア語で「愛さない」)への就職が決まる。

 社長の兆(岡田将生)から与えられたミッションは人知れず「世界を救う」こと。でもそれはスマホの充電を制限時間までにゼロにするというようなささやかなものばかりだった。その小さい行為がまわりまわって世界を救う、いわゆるバタフライエフェクトのようなことに文太は加担している。

 文太は青と赤のカプセルを飲んで超能力を得た。その能力は「相手に触れると心の声が聞こえる」というもの。ほんの“ちょっとだけ”の超能力。文太の他にもちょっとだけエスパーたちがいる。どこにでも花を咲かせられる・桜介(ディーン・フジオカ)、念じるとほんのりあったかくできる電磁波をちょっとだけ操れる円寂(高畑淳子)、動物にお願いを聞いてもらえる半蔵(宇野祥平)。彼らと協力して世界を救っていく。第4話のミッションがまたかなりささやかだった。「お風呂の栓を抜いておけ」「人参を食べさせろ」等々……。

 最初『ちょっとだけエスパー』のタイトルとエスパーたちが出てくる話と聞いたときは、エスパーたちが世界を救うために毎回、なんらかのミッションを、ささやかな能力で解決していく1話完結のSFヒューマンドラマなのかと想像していた。だがそうではなかった。毎回のパターンみたいなものはなく、毎回、どこに向かっていくのか予想がつかない。これはドラマとして本来良いことだと思う。

 第4話では四季がまちがって文太のカプセルを飲んで、驚きの能力が発現した。そして、第5話では、ノナマーレチームと別のエスパーチームが現れて、どっちが「ヴィラン」か、超能力バトルがはじまりそうな雰囲気だ。謎の青年・市松(北村匠海)が本格的に参入してきた。

 タイトルや宣伝ビジュアルのイメージだと、どちらかといえば、こういうシンプルな超能力で世界を救うストーリーのイメージであったが、それでは野木亜紀子が脚本を書いている意味はないだろう。やっぱり現代社会でしんどい思いをしている人たちへのまなざしをすくいとってくれることを期待してしまう。文太が就職氷河期世代という設定もあるからなおさらだ。

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