『プレデター:バッドランド』は“初心者”こそ楽しめる? 少年漫画的なアツさにも注目

『プレデター:バッドランド』“初心者”必見

 11月7日より『プレデター:バッドランド』が公開される。なんと本作はシリーズ初、“あの”プレデターが主人公となる作品である。

 1987年公開の伝説的な第1作でアーノルド・シュワルツェネッガーと死闘を繰り広げ、1990年の続編ではコンクリートジャングルを舞台に殺戮を起こすも、誇り高き戦士としての人格を垣間見せたプレデター。それに加えて『エイリアンVS.プレデター』ではエイリアン相手に人間と共闘してくれる頼もしさを発揮。それなのに第3作『プレデターズ』では狩りのために地球から人間を拉致する蛮行を繰り返すに至っていて、情緒を狂わせられる。

 勝手に知っていた気になっていたけど、私、プレデターのこと全然わかってなかったんだ……なんて膝をついてしまうのだが、その後も続くシリーズ作品で彼らはいろんな顔や文化を少しずつ見せてくれた。『プレデター:バッドランド』はそんな中、ついに多くを語ってこなかったプレデターが主人公の立場になることで、シリーズファンにとっても、さらに新しい視点でこの種族を捉えられることができる作品なのだ。そしてもちろん、シリーズ初心者にとってはむしろ“ここから始めるプレデター”として楽しめる映画となっている。

多くの観客に“ひらかれた”作品として

 先述のように、『プレデター:バッドランド』は誇り高き戦士であるプレデターが主役の物語。主人公のデクはまだ半人前のヤウージャ族の若者で、兄との稽古でも負け続き。そんな彼の弱さを良しとしない一族にとってデクの存在は汚点であり、ある日父親によって追放されてしまう。たどり着いた星は、宇宙一危険な最悪の地(バッドランド)。本作はそこで彼が本物の強さとは何かを知る、若きプレデターの成長譚となっている。それゆえに、老若男女が親しめる作品となっているのだ。

 また、これまでのシリーズでは残虐な殺戮シーンが印象的に描かれてきたが、本作は人間が一切登場せず、プレデターと宇宙生物、そしてアンドロイド(ティア:エル・ファニング)だけが出てくる。それゆえに“赤い血”が出ることはなく、どれだけ派手なアクションシーンを映しても(実際にかなり激しく暴れ回っていた)、決して“グロテスク”な印象にはならない。そのため本作のレーティングはGとなっており、全年齢が鑑賞できる作品となっている。従来そういった描写が苦手な観客にとっても見やすくなるこの設定はかなり画期的な発明であり、だからこそより多くの人にとって接しやすい作品になっている。

人生ハードモードな主人公プレデターに親近感!?

 そして何より、シンプルなストーリーがゆえにディテールが面白い本作。主人公デクの顔はプレデターにしては“かわいい顔”をしていて、初々しさがあると同時に観客に親しみやすさを与える。そんな彼が辿り着いた星は何もかもがバッドすぎて、不時着した瞬間からあらゆるクリーチャーに命を狙われる羽目に。「あ、これどう頑張っても勝てないチュートリアルバトルのやつだ」と錯覚してしまうような、最初からハードモード設定のゲーム的シークエンスに、思わず胸が躍る。

 タイトルの出方も含めて、本作はそういったゲーム性が楽しい。まずは追放された彼が手持ちの武器を確認し、観客にその性能をお披露目する。しかし、その中でも強そうな武器が早速クリーチャーに奪われ、突如サバイバルが開始。そういったワクワクの作り方がとても上手く、だからこそ序盤からすぐに不思議な世界観に引き込まれてしまうのだ。

 デクというキャラクターに同情しやすいのも、物語の没入感を高める要因として大きい。そもそも、“弱い”ことが許されず、常に獲物を狩って自分の強さを誇示し続けなければいけない種族性を考えると、プレデターの人生ってハードモードだ。デクも例外ではなく、最初から踏んだり蹴ったりで散々な目に遭うが、「ヤウージャ族がこれまで狩ることができなかった最強モンスターの首を持ち帰れば、親父も俺の強さに納得するだろう!」と、良くも悪くも前向き。そんな彼の過大な自己評価や驕り、盲目さが彼の弱さとして映されていく。しっかり観察せずに、冷静に考えずに拳で解決する精神で危険な場所に突っ込もうとするところも含めて、彼は完璧ではない。

 そういった意味で、何も語らず圧倒的な強さで淡々と人間を追い詰めてきた従来のプレデターと比べてデクはものすごく“人間くさい”。しかし、その不完全さが主人公としての魅力を高め、親近感を得ると同時に彼の成長にドラマ性を感じることができるのだ。

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる