『ザ・ロイヤルファミリー』が視聴者の心をつかむ理由 いい意味で“王道”の日曜劇場に

『ザ・ロイヤルファミリー』の物語の美しさ

栄治と耕造を中心にファミリーが増えていく

 第2話。栄治は競馬事業部の専任秘書に任命された。金食い虫の競馬事業部撤廃を考える優太郎から、中央競馬への1勝を迫られた耕造は、それに乗ってしまう。しかしもっとも勝利に近い馬と思われたロイヤルファイトの調整を急いだ耕造と、調教師がぶつかって決別。新たにロイヤルファイトと、ともに買われたロイヤルイザーニャの調教師となった広中博(安藤政信)は、イザーニャの血統に、芝での逃げ馬の才能を見抜き、見事、中央競馬での1勝をつかみ取った。

 勝利をつかんだのが、誕生したときから足が曲がっていたことで、中距離は難しいと思われてきたイザーニャだったことや、資質に気づいた広中、イザーニャやファイトの性格を見抜いたスタッフたちの導きが胸を熱くした。

 第3話では、牧場経営の厳しさと、それでも夢を繋いでいこうとする人々の姿が映し出された。イザーニャの勝利で首の皮がつながった競馬事業部だったが、その後の1勝が続かずにいた。おまけにイザーニャとファイトがケガをしてしまう。新たな競走馬を探すなか、経営難に陥る日高の牧場の現状を知る栄治。栄治の元恋人・野崎加奈子(松本若菜)が手伝う実家のファームも、そうした牧場のひとつだった。しかし父・剛史(木場勝己)はセリ市を介さず馬主と直接取引する「庭先取引」と、馬主の覚悟にこだわり、毎回、訪れる馬主とケンカに。我が強い者同士、耕造とも衝突するが、G1で勝つという同じ夢を持つ者でもある。情熱のぶつかり合いの末、取引が成立した。

馬の美しさと、夢を追い、継承していく人々のドラマ

 一貫して、何よりもまず、馬が美しい。視聴者には、競馬に興味がない人も少なくないだろう。しかし競馬に関してまったくの素人から始まる栄治を通して、そうした層も自然に引き込んでいく。北海道の雄大な自然のもと、牧場で走り、凛と立ち、たわむれる競走馬たち。栄治が馬に触れた際の感動も、伝わってくる。

 そしてJRA全面協力により、実際の過去の映像にCGを加えるなどして、映し出されるレースが圧巻。ゴールへと走る競走馬を正面から捉えた画や、聞こえてくる息遣いにも鳥肌が立つ。勝負事への興味がなくとも、競走馬たちの力強さや気品にぐっとくる。そんな馬たちに引き付けられた人々が、夢を追い、継承し、“ファミリー”を築き上げていく。一方で浮かび上がってくる本当の家族、山王一家の関係性も気になるところだ。

 耕造の妻・京子(黒木瞳)は競馬を「大嫌いなんです」と口にしていたが、そこには馬主だった父への憎しみと、父に重なる耕造の姿がある。栄治ら“ロイヤルファミリー”からの刺激によって、何か変化があるだろうか。目指すは有馬記念優勝。20年にわたり、どんなドラマチックな物語が待っているのか、楽しみだ。

『ザ・ロイヤルファミリー』の画像

日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』

早見和真の同名小説をドラマ化。税理士としての挫折を味わい希望を見出せなくなってしまった主人公の人生が、馬主である山王耕造との出会いにより大きく動き出していく。

■放送情報
日曜劇場『ザ・ロイヤルファミリー』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、目黒蓮、松本若菜、安藤政信、高杉真宙、津田健次郎、吉沢悠、木場勝己、尾美としのり、関水渚、長内映里香、秋山寛貴(ハナコ)、三浦綺羅、小泉孝太郎、黒木瞳、沢村一樹、佐藤浩市
原作:早見和真『ザ・ロイヤルファミリー』(新潮文庫刊)
脚本:喜安浩平
演出:塚原あゆ子、松田礼人、府川亮介
主題歌:玉置浩二「ファンファーレ」
プロデュース:加藤章一
協力プロデュース:大河原美奈、小髙夏実
編成:佐藤礼子、中野翔貴
製作:TBSスパークル/TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/RoyalFamily_tbs/
公式X(旧Twitter):@royalfamily_tbs
公式Instagram:royalfamily_tbs
公式TikTok:@royalfamily_tbs

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