古谷一行×木の実ナナ『ピンクハンター』は令和では作れない? 軽妙洒脱な味わいを再発見

『ピンクハンター』軽妙洒脱な味わいを再発見

「そう、私はピンクハンター」

 若き日の古谷一行が名乗ると、その10秒後には女性がトップレスになって古谷に抱きつくという隙のない運び。こんなダイジェスト映像で始まる刑事ドラマ『ピンクハンター』がCSホームドラマチャンネルで放送される。

 『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日系)で放送された作品で、主演は古谷と木の実ナナ。1979年に『ピンクハンターI 日本に一人しかいない刑事』、1980年に『ピンクハンターII 殺人ゆき新婚旅行』の2作が製作された。

 物語は、やたらと女性にモテるプレイボーイの左近太郎警部(古谷一行)とやたらとファッショナブルな山口かおり警部補(木の実ナナ)が連続殺人事件を解決するというもの。「ピンクハンター」とは左近が自称するニックネーム。コメディ映画『ピンク・パンサー』シリーズも意識しているようで、第2作では間抜けな刑事・鉢山(常田富士男)がクルーゾー警部そっくりの扮装をする場面がある。

 なんといっても左近警部のダンディーで軽薄なキャラクターがいい。バーで相棒の山口を口説いている最中に殺人事件が発生し、ボーイ(矢崎滋)に本当に刑事かと疑われると「疑うのは俺に任せてほしいね」とすかさず切り返す。捜査中にもかかわらず女店主(沢たまき)にデートを申し込んで「犯人を挙げられたらね」とかわされると、「いざというとき、俺が犯人になっちまったっていいんだ」とうそぶく。

 第2作でもクラブのママ(朝丘雪路)に「また会えるといいな」と囁き、拒絶されても「男と女だ。ベッドの上で再会だってあるよ~」と軽口を叩く。まるで放送当時人気だった『ルパン三世』を実写にしたような男だ。

 その一方で、ケンカが強いわけでもなければ、拳銃も発砲しない。特技はただひたすら女性にモテるだけで、次々と事件に関わる女性が部屋に転がりこんでくる。こんな刑事は日本のドラマ史上初だろう。

 ファッショナブルさも本作の特徴だ。左近のスーツは『傷だらけの天使』で萩原健一が着用して話題になった「BIGI」、愛車はダイハツのオフロード向け4WD「タフト」。高級マンションの自宅にはフルオートのオーディオセットが常備されていて、「俺の部屋のベッドでレコードを聴こう」が口説き文句。

 木の実ナナ演じる山口も、とても刑事とは思えないような華麗なファッションだった。彼らが属しているのが「警視庁原宿分室」というのもオシャレさを感じさせる(ただし、原宿ロケはほとんど行われていなかった)。

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