市原隼人が『もしがく』で放つ“色気”がたまらない トニー安藤は史上最高のハマり役に

市原隼人、『もしがく』は最高のハマり役

 演じる市原には、トニー安藤という役を表現するための言葉が限定されている。かぎられた手札をどのように切るか。これが本作における市原の闘いなのだろう。しかも、周囲も個性派ぞろいだ。一枚のカード(=セリフ)をどのタイミングで、どう出すか。自身のターン(=出番)が回ってくるたび、勝負の瞬間なのではないかと想像する。そしていまのところ“市原隼人=トニー安藤”は勝ち続けている。他を圧倒することなく、ほどよいバランスで。 

 トニー安藤は佇まいこそが重要だ。佇まいでこそ、その存在感を示さなければならない。彼はつねにダラダラとしていてやる気がないようにも思えるが、演じる市原自身がリラックスしているように見えるかといえば、そんなことはないだろう。トニー安藤はただそこにいるだけで、威圧感がある。これを演技で表現するのは容易ではないはずだ。衣装やメイクなどである程度はどうにかなるだろうが、それだけでは表面的なキャラクターにしかならない。人間の放つ空気やオーラというのは、やはり内面から滲み出るものである。

 本作はコミカルな作品だが、市原の演技には強い緊張感がある。カメラに捉えられたとき、たとえそれが隅のほうだとしても、“こわもてな用心棒”であることを彼は示さなければならない。画面にトニー安藤が映るたび、市原が気を張っているのが分かる。そしてそれは渋くてクールな表情にも漲り、身体の隅々にまで行き届いていると思う。

 もちろん、発する言葉にも表れる。市原はスピードもトーンも完全にコントロールし、トニー安藤のターンがやってくるたび、一瞬だけ、場を支配してみせる。こうした表現の精度の高さが、市原の俳優としての色気につながるのではないだろうか。トニー安藤は、やるときはやる人物なのだろうと踏んでいたが、やはりそうだった。もしもあなたが第3話を未見ならば、すぐにチェックしていただきたい。

映画『おいしい給食 炎の修学旅行』特報

 ちなみに、市原が主演を務める『おいしい給食』シリーズの劇場版第4弾となる『おいしい給食 炎の修学旅行』がまもなく公開される。こちらもコメディタッチの作品だが、演じるのは“給食マニアの教師”だ。言わずもがな、トニー安藤とは真逆の役どころである。それでいて時代設定はかなり近い(「シーズン1」は1984年からはじまる)。市原隼人という演技者のダイナミックでアクロバティックな演技が堪能できる作品なのだ。そしてもちろんこちらにも、『もしがく』のときとは異なる色気が収められている。

『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の画像

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう

1984年の渋谷を舞台に、脚本家・三谷幸喜の半自伝的要素を含んだ完全オリジナル青春群像劇。「1984年」という時代を、笑いと涙いっぱいに描いていく。

■放送情報
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、戸塚純貴、アンミカ、秋元才加、野添義弘、長野里美、富田望生、西村瑞樹(バイきんぐ)、大水洋介(ラバーガール)、小澤雄太、福井夏、ひょうろく、松井慎也、佳久創、佐藤大空、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫ほか
脚本:三谷幸喜
主題歌:YOASOBI「劇上」(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
音楽:得田真裕
プロデュース:金城綾香、野田悠介
制作プロデュース:古郡真也
演出:西浦正記
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/moshi_gaku/
公式X(旧Twitter):@moshi_gaku
公式Instagram:@moshi_gaku
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