『死霊館 最後の儀式』シリーズ完結にふさわしい見事な幕引き 朝ドラ×ホラーの完成形に

「これは実話である」。何が起きようとそう言い切る清々しさを引っ提げて、ついに『死霊館』ユニバースが大団円を迎えた。『死霊館 最後の儀式』(2025年)はシリーズ完結にふさわしい、痛快心霊ホラー人情エンターテインメントである!
ウォーレン夫妻は、持ち前の心霊能力とガッツと気前の良さでアメリカ中の心霊事件を調査・解決していた。しかし、弱き人々を助けるため、心霊と戦い続けてきた夫婦だったが……気が付けばいい歳になっていた。夫のエド(パトリック・ウィルソン)は心臓に持病を持ち、妻のロレイン(ヴェラ・ファーミガ)は、娘のジュディ(ミア・トムリンソン)に受け継がれた心霊能力を心配している。もう危険な仕事はできないと判断し、ふたりは引退を決断。心霊とは距離を取る。ところが、ある家族が心霊現象に襲われ、その背後にはウォーレン一家との因縁もあって……。
まず結論から言うと、同作の朝ドラとホラーのミクスチャーマインドは、本作で完成形を迎えた。いよいよ壁はなくなったと言っていいだろう。このシリーズはホラーだが、家族の絆を描く朝ドラ感たっぷりの物語でもある。特に今回はウォーレン一家のドラマが中心になるため、より朝ドラ感が強い。娘のジュディの婚約者が現れ、ご両親へのご挨拶に来るくだりは完全に朝ドラのテンションだ。両親に緊張の挨拶をする若者も、そんな若者を前に緊張するウォーレン夫妻も、どちらも観ていて非常に微笑ましい。
このまま朝ドラでもいいかなと思うほどだが、ところがどっこい、これは『死霊館』だ。そんなわけで今回もパワー系の心霊現象が連発する。本作のメインの悪役は呪われた鏡で、偶然にも鏡を手にしてしまった罪なき一家が恐怖のどん底に。「うわぁ、こういうシチュエーションは嫌だなぁ」といった、じんわり系の恐怖もあるが、やはり輝くのはジャンプスケア系のビックリドッキリシーンだ。音、恐怖映像、謎の巨漢、信じられないくらい大量の吐血などなど、バリエーション豊かなアイデアで飽きさせない。
そんな非常に分かりやすい&強烈な呪われた家族の風景と、朝ドラ感全開のウォーレン一家を交互に見せることで、「もう歳も歳なのに、こんな大変そうな現場に戻るのかよ」と観客の期待とテンションを盛り上げてくれる。いよいよウォーレン夫妻が現場に乗り込むシーンは、まるでファンタジー映画で魔王の城に乗り込むようだ。いわゆるランドマーク(その土地のシンボル)的に使われるデカい工場は、完全に魔城の風格である。
かくしてウォーレン夫妻vs呪いの鏡のバトルが始まると、『死霊館』名物の屋敷がブッ飛ぶド迫力心霊ファイトが展開。呪われた鏡も最終作にふさわしく、とてもアグレッシブに襲ってくる。「呪われた鏡」自体はよく出てくるアイテムだと思うが、あんなに活きがいいのは初めて見た。一歩間違えばムチャクチャなビジュアルだが、ここに至るまでの段階を丁寧に踏んでいるので、無理なく受け入れられる……とまでは断言できないが、とにかく劇場で目撃して度肝を抜かれてほしい。
そして、エンディングである。シリーズのファン的には、ここは胸に来るものがあるだろう。今までのすべてを総括しつつ、まさに大団円という表現がピッタリの終わり方だ。特に大量のカメオ出演は、その詳細が分からなくても、「あ、何か今、特別なことが起きているな」と観客に伝わるようになっている(海外の映画を観ていると「よく分かんないけど、なんかこの人はゲスト的な特別出演なんだろうな」と分かるやつあるじゃないですか。あれです)。このシリーズを立ち上げたホラー映画界の昇り龍ことジェームズ・ワンは、かつて『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)で、亡くなったポール・ウォーカーへ映画を使った最高の送別を行った。あの技術は本作の監督マイケル・チャベスに見事に継承されたと言えるだろう。絶対にウォーレン夫妻はあんなワイルドでアメリカンな人物ではなかったと思うが、「これは実話である!」という言葉を今は信じたい。
他にも「呪われたのは不運だったが、家族の絆は深まった」という、あまり聞いたことがないフォローの字幕など、細かい見どころも多々あった。まさに大人気シリーズ完結にふさわしい、安心安定、そして見事な幕引きである。
■公開情報
『死霊館 最後の儀式』
全国公開中
出演:ヴェラ・ファーミガ、パトリック・ウィルソン
監督:マイケル・チャベス
脚本:イアン・B・ゴールドバーグ、デヴィッド・レスリー・ジョンソン、リチャード・ナイン、ジェームズ・ワン
製作:マイケル・クリアー、ピーター・サフラン、ジャドソン・アーニー・スコット、ジェームズ・ワン
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2025 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved


























