『ばけばけ』“トキ”髙石あかりにこれ以上ない良縁が訪れる 傳の恨めしくて切ない“愛情”

『ばけばけ』髙石あかりに良縁が訪れる

 10月7日に放送された『ばけばけ』(NHK総合)第7話では、三之丞(板垣李光人)が松野家への婿入りを提案する。

 一家をあげてトキ(髙石あかり)の婿を探す松野家。遊女のなみ(佐藤ほなみ)の「おなごが生きてくには、身を売るか男と一緒になるしかない」という言葉を真に受けたかはわからないが、傳(堤真一)やタエ(北川景子)の力を借りながら、見合い相手を探した。

 初週から夢に挫折し、父の事業が失敗して工場で働くトキはさながら『女工哀史』そのままで、朝ドラ第113作の主人公は、子役から交代後も変わらず人生ハードモードである。縁結びの占いに行った友人は結婚を決め、トキの恨みは募る一方。三之丞の軽口に、まともに返そうとした自分が恨めしい。好転の兆しはまったくないなか、トキに良縁が訪れる。

 見合い相手は中村守道(酒井大成)。士族で家格は松野家と同格というこれ以上ない結婚相手だ。傳・タエ夫妻のとりなしで実現した縁談にのぞむトキは、かなり緊張している様子。洋装の中村父子と、武士の正装で参上した松野家のコントラストも異色だ。“狐とむじな”のばかし合いがどっちに転がるか、ひとまず静観である。

 第7話で注目されたのはトキと傳の逢引きだった。要するにデートだが、傳が“ランデブー”と呼ぶ清光院への同伴は傳から誘ったもの。トキが怪談好きと知っている傳が、連れていこうと計画したのだろう。怪談スポットで大はしゃぎのトキを見守る視線が優しい。史跡とエピソードを下調べするなど準備もばっちりである。

 「おトキを元気づけるためのランデブー」で、傳はトキを安心させたかったのだろう。親戚の女工に気を配る傳は立派な雇い主である。という結論で終わればよかったが、何やら松野家の反応がおかしい。傳と2人で逢引きした、と聞いた司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)は急に取り乱して顔を見合わせる。

 遠縁の親戚であるトキに対して、傳とタエは以前から特に目をかけていたようだ。トキ自身も「我が子のようにかわいがってくださるのは、どげしてだろう」と不思議がる。司之介たちは急に取りすまして、傳夫婦が「無類の親戚好き」だからとか、赤子の頃から見ているトキのことがかわいいのだ、と取ってつけたような理由を並べる。

 司之介たちが何かを隠しているのは明らかだ。そういえば、第6話でタエとフミが対面するシーンで、フミの「母親として」という言葉を聞いて、タエの眉が一瞬曇ったように見えた。これは推測だが、トキは傳とタエが拾ってきた子で、身分の高い家で周囲の目をはばかって司之介たちに預けた、などの経緯があるのではないだろうか。

 そのように考えると、「怪談とは、怖いだけでなく寂しいものよのう」という傳の台詞の真意もわかる気がする。単なる愛情ではない、いつくしみを込めた視線は、今作の恨めしさの一端を担っている。それはとても切ないものである。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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