『ばけばけ』明治期の動乱が描く“現代性”とは? ふじきみつ彦の“悲しみに寄り添う物語”

NHK連続テレビ小説第113作目『ばけばけ』(NHK総合)が、ついに幕を開けた。『怪談』などで知られる明治の作家・小泉八雲の妻をヒロインのモデルに、幕末から明治へ時代が移り変わる中で、歴史の大局からこぼれ落ちた人々を描き出す。

朝ドラ史上3番目に多い2892人が挑んだオーディションでヒロイン・トキ役を射止めたのは、髙石あかり。阪元裕吾監督が手がける『ベイビーわるきゅーれ』シリーズで、すでに映画ファンの心を掴んでいた髙石は、ドラマ『わたしの一番最悪なともだち』(NHK総合)や『御上先生』(TBS系)などで広く知られる存在になった。トキの夫・ヘブン役を務めるのは、1767人の中から選ばれたトミー・バストウ。世界的に高く評価されたドラマ『SHOGUN 将軍』(ディズニープラス)で、流暢な日本語を話すポルトガル人司祭を演じた注目株である。

本作の脚本を手がけるのは、ふじきみつ彦。名優たちがシェアハウスで共同生活を送る『バイプレイヤーズ』(テレ東系)シリーズや、サブカルおじさんの味わい深い日常を描いた『デザイナー 渋井直人の休日』(テレ東系)、松重豊が猫の家政婦に扮した『きょうの猫村さん』(テレ東系)など、独特な質感の深夜ドラマを世に送り出してきた。他にも、ムロツヨシ主宰『muro式.』や岡部たかし・岩谷健司の演劇ユニット『切実』への脚本提供、さらには幼児向け番組『みいつけた!』(NHK Eテレ)では作家業に加え、キャラクター制作や作詞にも携わるなど、その活躍は幅広い。
いわゆる“劇的”な展開は多くないけれど、ささやかな日常のユーモラスな切り取り方が絶妙で、個人的には以前から朝ドラを書いてほしいと思っていた脚本家の一人だ。NHKのよるドラ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』では、往復書簡のように綴られた2人のエッセイをもとに、近所の人たちに温かい目で見守られながら下積みを重ねた阿佐ヶ谷姉妹(木村多江・安藤玉江)が、やがて全国区で活躍するまでの姿が描かれる。たけだのぞむの漫画を実写化した夜ドラ『褒めるひと褒められるひと』は、総務部で心すり減らす日々を送る主人公・詠子(森川葵)を励ますために、上司の坂東さん(川崎鷹也)が意識的に“褒めること”を始める。けれど、その褒め言葉がなんとも独特で……というお仕事ドラマだ。
始まったばかりの『ばけばけ』でも、「わしがしじみで人様に食われる定めじゃったとしたら、おフミが作るしじみ汁になりたいの」「よう分かりませんけど……ありがとう存じます」といったトキの父母による軽妙なやりとりや、蛇と蛙に扮した阿佐ヶ谷姉妹の語り、一家総出の丑の刻参りでの幕開けなど、随所にふじき作品らしさを感じる。




















