『ばけばけ』髙石あかりの複雑な表情が物語るトキの戸惑い ヘブンを思うがゆえの秘密

「もう……お分かりですよね?」
温かい陽の光が降り注ぐ室内で、上等な身なりをした医師・黒田(安井順平)が優しい声で、そうトキ(髙石あかり)に告げたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』第108話。
黒田の言いたいことがわかっていたようなトキは居住まいを正して“告知”をちゃんと聞こうとする。でも、心が落ち着かなくて遮ってしまう……。そんなやりとりを何度か繰り返して黒田から言われた「おめでとうございます」の言葉に、はにかんだトキの嬉しそうで今にも泣き出しそうな顔。嬉しい出来事に、トキはもっと満面の笑みを浮かべるかと思ったのに、という思いも抱きつつ、温かいシーンに朝からほっこりした気持ちになった。

そして、妊娠に薄々気がついていたのは、トキ本人だけではなかった。家に帰ったトキの様子がいつもと違うことに気がついたフミ(池脇千鶴)は、トキにそっと声をかける。
「おトキ? もしかしたらなんだけど、あげなんだない? ……やっぱり、そげ?」
「そげ」
「ほんとに?」
「そげ」
使っているのは、「あれ」とか「それ」という言葉だけ。だけど、女性同士だからなのか、もう十分に伝わるものがある。「よかった〜!」となんだか戸惑っている様子のままのトキ以上にフミは喜びを爆発させた。後からやってきた司之介(岡部たかし)も「やった! やった!」と目に涙を浮かべてトキの身体をゆするから、フミに「いたわってごしなさい!」と止められていた。やっぱりそう。素直な性格の松野家の人間なら、妊娠を知ったらこれくらいのリアクションは起こるはずだ。

トキの反応を見ていると、自分の妊娠を喜んでいないわけではないよう。フミが喜んでいるときは一緒に嬉しそうな顔をするし、黒田医師のところでももう何を言われるのかわかった時点で「ふふっ」と抑えきれない笑みをこぼしていた。
このトキの浮かない表情は、「フィリピン滞在記」を書くためにヘブンがフィリピンへ渡るという話が出ていることが原因のようだ。
子ができたことで、トキにはこの先出産という大きなライフイベントが待っているし、子が産まれたら母という役割が加わって本当に人生が一変する。そして今は「物書きになりたい」という夢を持ったヘブンの人生も変わってしまうだろう。
ただし、ヘブンに子ができたことを伝えれば、だ。

第107話でトキがラン(蓮佛美沙子)からヘブンにフィリピン行きの話が出ていると聞いたとき、明確な時期はわからなかった。でも、数カ月後にすぐ出発するのであれば、トキのお腹は目立たないし、言わない選択もできる。そうすればヘブンは何も知らないまま、自分の好きな人生を歩んでいける。妊娠を手放しで喜べなかったのは、そんなトキなりのヘブンのことを考えた優しさが頭の中にあったからのようだ。それを家族に話したトキは一旦、ヘブンには話さないという決断をする。
そうして迎えた、妊娠を隠しておきたい松野家の食卓はいつもより会話が少なく、ぎこちない。思い返すと、トキとヘブンは建前を大事にしたり、何か隠していることがあると途端にうまくいかなくなる。本音で向き合っているからこそ、言葉を超えて心が繋がり、分かり合えるものがある2人なのだ。
ヘブンはランを通じて、トキがフィリピンの話を全て知っていると聞かされる。2人が本音をぶつけ合う日も近いのかもしれない。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史、小林直毅、小島東洋
写真提供=NHK






















