『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』大ヒットの衝撃 プレスコ会話劇の妙と若手作家の未来

『ミルキー☆サブウェイ』ヒットの衝撃

シンエイ動画が送り出す若手クリエイター

 そして浮かぶ、どうしてこれほどまでに異色のアニメシリーズが生まれたのかという疑問。亀山陽平監督という、過去に商業で目立った活動をしていないクリエイターを抜擢し、専門学校の卒業制作として手がけた『ミルキー☆ハイウェイ』の続編を作らせる。以前なら考えられなかった流れだが、今は違う。見里朝希監督の『PUI PUI モルカー』が存在しているからだ。

 ショートアニメのTVシリーズという点も、送り出したのがシンエイ動画という点も共通。東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の修了作品として見里監督が手がけ、国内外で高い評価を受けた『マイリトルゴート』を観て、新しい才能を世に送り出したいと誘ったシンエイ動画が、同じように亀山監督の才能に目を付け作ってもらったのかもしれない。

 シンエイ動画は、『化け猫あんずちゃん』(2024年)でも、多摩美術大学の卒業作品『Airy Me』が認められ、いくつもの商業作品に関わっていた久野遥子監督を、実写の山下敦弘監督とともに起用した。学校を出て間もない個人のアニメーション作家に才能が商業の場をもらい活躍する例がまたひとつ加わったことで、同様に新しい才能を見つけようとする動きが高まりそうだ。

 10月10日から13日まで国立新美術館で開催される「ICAF2025」は、大学などでアニメーションを学ぶ学生が作ったアニメーションを上映する毎年恒例のイベント。見里監督も久野監督も上映されて注目を浴び、『ONE PIECE FAN LETTER』の石谷恵監督や、『わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)』の内沼菜摘監督も、それぞれ『かたすみの鱗』『最終ロケット・イェイ&イェイ』が上映されて関心を誘った。

かたすみの鱗(石谷 恵) / Scutes on my mind (Megumi ISHITANI)
[卒業制作アニメ]最終ロケット・イェイ&イェイ

 『最終ロケット・イェイ&イェイ』は宇宙を舞台に短いエピソードが連続して描かれシリーズになる点や、会話劇のシュールさが『銀河特急ミルキー☆サブウェイ』に少しだけ重なる。こうした突拍子もない才能が何かと話題の『わたなれ』に繋がるのだとしたら、同じような才能を見つけにICAFに行くなり、年度末に多く開かれる各校の卒業・修了作品展に行ってみるのも楽しそうだ。

参照
※ https://www.cinra.net/article/202509-kameyama-yohei_imgwyk

■公開情報
『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』
公式YouTubeほかにて配信中
キャスト:寺澤百花、永瀬アンナ、小松未可子、金元寿子、小市眞琴、内山昂輝、山谷祥生、藤原由林
原作・監督・脚本・キャラクターデザイン・音響監督・制作:亀山陽平
音響会社:ビットグルーヴプロモーション
主題歌:キャンディーズ「銀河系まで飛んで行け!」
挿入歌:「ときめき★メテオストライク」水無瀬ミナミ(CV.田村ゆかり)
企画制作:シンエイ動画
製作:タイタン工業
©亀山陽平/タイタン工業
公式サイト:milkygalacticuniverse.com/
公式YouTubeチャンネル: @milkygalacticuniverse
公式X(旧Twitter):@MGUJapan
公式Instagram:@milkygalacticuniverse
公式TikTok:@milkygalacticuniverse

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる