小笠原亜里沙&伊瀬茉莉也が語る“進化”と“変化” 『パンスト』と重ねた軌跡を振り返る

2010年秋クール、とあるアニメが放送されて大きな話題を呼んだ。その名も『PANTY & STOCKING with GARTERBELT』(以下、『パンスト』)。カートゥーン風なキャラクターデザイン、“逆作画崩壊”とも言われたスタイリッシュな変身シーン、そしてかわいいビジュアルに反する、過激で破天荒でまさに「セックス&バイオレンス」を体現した世界観は、国内外問わず、多くのアニメファンの心に突き刺さった。最終回は、あまりにも理不尽で衝撃的な結末とともに「TO BE CONTINUED IN NEXT SEASON」というメッセージが映し出され、ファンは続編を待ち続けることになった。
待っている間に15年もの時間が流れ、すっかり「続編なんてやっぱり無理だったんだ」と諦めてしまっていた2025年夏、まさかの新作『New PANTY & STOCKING with GARTERBELT』(以下、『Newパンスト』)が放送開始。終盤戦を迎えるにあたり、パンティ役の小笠原亜里沙とストッキング役の伊瀬茉莉也にインタビュー。厳格化したコンプライアンスへの向き合い方や前作の思い出、新キャストを迎えた新作のアフレコ裏話などを語ってもらった。
「後にも先にもこんなアフレコを体験する作品はない」

――『パンスト』が15年ぶりに新作として復活することを聞いたときの率直な感想をお聞かせください。
小笠原亜里沙(以下、小笠原):正直、冗談だと思いました(笑)。この令和の時代に、まさかそんなことが……ねぇ?
伊瀬茉莉也(以下、伊瀬):そもそも旧作の最終回が衝撃的なラストに加えて、「TO BE CONTINUED IN NEXT SEASON」というメッセージが出て、続編を匂わせるものではありましたが、あの時点で決まっていたわけではないんです(笑)。今石洋之監督をはじめ、制作チームの「続きができたらいいな」という希望をこめた締めくくり方だったんです。それで、ファンの方々からしたら「いつ続きが観られるのかな?」という気持ちで待ち続け、15年なにもないまま今になってしまった(笑)。
小笠原:茉莉也ちゃんもずっと続編を待ってたもんね。
伊瀬:本当に待っていました! いろいろ紆余曲折があり、15年の時を経て、やっと新作を作ることができて、自分自身も「ああ、ついに……やっときたか」という感慨深い、もう待ちに待ったという感じでしたね。

――おふたりにとって、『パンスト』という作品は、声優としてのキャリアにおいて、ひいては人生においてどのような存在でしょうか?
伊瀬:姉さん、どうですか(笑)?
小笠原:後にも先にもこんなアフレコを体験する作品はないですね(笑)。『パンスト』のおかげで、自信というか、度胸がついたなと思います。あんなに過激な言葉を使いまくっていたのに、もう平気になってしまっているので。
伊瀬:私は旧作の収録時が、ちょうど20歳くらい。青春とともに過ごした作品でもあるので、自分の人生においてとても強い思い入れがあります。当時、すごく多感な時期だった自分と、『パンスト』という作品が持つエネルギーがちょうどリンクして、「イケイケゴーゴー!」って感じでアフレコしていました(笑)。
小笠原:過激なセリフを恥ずかしがるどころか、攻めの姿勢で挑めていたのがすごいよね!
伊瀬:いい意味で、セリフの意味をあんまり深く考えてなかったんですよ。あの頃はまだ子どもだったというか、一個一個のド下ネタみたいなセリフも、「へー、これ言えばいいんだ」みたいな感じで。だから恥ずかしいというより、「むしろクールでカッコいい」という気持ちでした。すごくいい時期にやれたなと思います。

お気に入りエピソードにみる『パンスト』の革新性
――旧作が放送当時にかなりの反響を呼びましたが、『パンスト』以前と『パンスト』以降で、何か周囲で変化などはありましたか?
小笠原:私は特に何もないです(笑)。SNSというものを全くやらないので……。
伊瀬:私は『パンスト』で海外ファンの方が増えた実感があります。2010年の放送当時、ちょうどTwitter(現X)などのSNSが流行り出した時期でもあったので、海外ファンの方からのリプライもたくさんいただきました。自分の出演作品が日本だけではなくて、海外でもすごく人気になっていると感じたのも、もしかしたら『パンスト』が初めてだったかもしれません。あと、私の演じるストッキングも、姉さんの演じるパンティも、すごく個性が強いキャラクターデザインじゃないですか。こういうアメコミ風なデザインって、日本のアニメでは当時珍しかったので、そういうキャラクターを演じられたことで「ストッキング役の伊瀬茉莉也」という認知に繋がったのではないかと。今でも、私の代表作のひとつに挙げていただく方は多いと思います。
――旧作で、特にお気に入りのエピソードを教えてください。
小笠原:ずっと言ってるんですけど、私は#10「チャック・トゥ・ザ・フューチャー」です。あれは本当に素晴らしかった。どんな話かというと……うーん、結局なんなんでしょう(笑)? 口で説明するのが難しいのですが、でも、あんなに実験的なエピソードを終盤に入れてくるところが、『パンスト』の革新性を表していますよね。
伊瀬:姉さんのお気に入りは「チャック・トゥ・ザ・フューチャー」なんですね! “ギークボーイ”と絡むエピソードではないんですね(笑)。
ーー「チャック・トゥ・ザ・フューチャー」以外にも#10では、パンスト姉妹がバンド形式で「D City Rock」を披露する「HELP! 二人はエンジェル」も、MVのようなスタイリッシュさが印象に残っています。
小笠原:ありまたね。
伊瀬:うーん、懐かしい。思い出深いエピソードが多くてひとつに絞るのが難しいですが、強いて挙げるなら、私は#5「ヴォミッティング・ポイント」です。今では『ダンダダン』や『呪術廻戦』などでシリーズ構成・脚本を務める瀬古浩司さんが脚本を担当した初期作品なんですよね。
小笠原:これも衝撃的な回だった。
伊瀬:このエピソード、とても切ないんですよ。ぜひほんの宴を見ていただきたいので、あえてエピソードの詳細については伏せますが、とにかくせち辛い……。
小笠原:急にこれまでの『パンスト』と絵柄が変わるし、パンスト姉妹がほとんど出てこないし、別のアニメが始まったのかと思うよね(笑)。
伊瀬:でも、人がゴーストになってしまった動機やキッカケが描かれていて、すごく印象的だった。あと、このおじさんの娘がパンスト姉妹のファンなんだよね。最後に娘さんのためにサインを残して去っていくところもクールでした。
「コンプラに厳しい世の中になっても、『パンスト』は『パンスト』」

ーーこの「ヴォミッティング・ポイント」で「これで世界の三大汚物をコンプリートってわけ!」というパンティのセリフもありますが、『パンスト』といえば性的描写から糞尿・吐瀉物などの汚物まで、“下品”とされるネタをふんだんに盛り込んでいるところも特徴でした。旧作からの15年間でだいぶコンプライアンスに厳しい世の中になりましたが、新作の台本を読んで作風の変化は感じましたか?
小笠原:旧作と比べて“喘ぎ”は減っているかなと感じましたが、だからといって内容は変わらない。コンプラに厳しい世の中になっても、やっぱり『パンスト』は『パンスト』だなって。
伊瀬:私も、世間に配慮して大人しくなったという印象は全くないです。相変わらずパンティ&ストッキングはクールで、ビッチで、イケてる天使。

小笠原:むしろ過激になってない(笑)? 初っ端からパンティのアソコがデカデカと映されていたし。他にも、#4のEPISODE9.「昨日に向って撃て!」とか、画風が昔のカートゥーン風になって、声優さんも入れ替わっちゃって、最終的にマルチバース展開になったり、もうめちゃくちゃだったよね(笑)。
伊瀬:旧作から15年も経てば、時代や価値観だけでなく、制作陣もクリエイティブの面で変化があると思います。その結果、過激さのベクトルや見せ方が変わった部分はあるかもしれませんが、芯の部分はずっと同じ印象です。
ーー時代性という話でいえば、新キャラクターであるポリエステル&ポリウレタン兄弟の“今っぽさ”や、#1で“ギークボーイ”ことブリーフが脳内会議で「時代にアジャストするんだろ」と自分に語るシーンなどは、令和にあわせたアップデートを意識されていると感じました。
小笠原:確かに。あと以前と違う点でいうと、#4のEPISODE8.「ペット・セメタリ―ヒルズ」でパンティが子猫のゴーストを拾いましたが、以前よりもこういう“良い話”が増えたかなというのは思いましたね。





















