不器用な恋、熱い友情、白熱バトルまで TVアニメ『ダンダダン』第2期の“神展開”を総括

『ダンダダン』第2期の神展開を総括

 TVアニメ『ダンダダン』第2期が最終回を迎える。2024年10月に放送された第1期が異例の早さで同年12月に第2期制作を発表して以来、多くのファンが続編を待ち望んできた。

 原作は『少年ジャンプ+』で連載され、累計発行部数は800万部を超える人気作。その人気を裏付けるように、“幽霊は信じるが宇宙人は信じない”モモと、“宇宙人は信じるが幽霊は信じない”オカルンという真逆の信念を持つ2人の出会いから始まるオカルティックバトル&青春物語は、第2期において単なるキャッチコピーを超え、物語の核心として深く掘り下げられた。

TVアニメ「ダンダダン」第2期オープニング映像|アイナ・ジ・エンド「革命道中」

 物語序盤を彩ったのは、モモの幼なじみであるジジと、彼に憑いた怪異・邪視との戦いだった。ジジはモモの初恋の相手であり、オカルンにとっては恋敵として立ちはだかる存在。しかし、物語が進むにつれ、彼らは互いの弱さや傷を知り、友情を育んでいく。邪視がジジの初恋に起因する悲しい存在であったことも加わり、バトルは単なる力比べではなく、過去や感情に裏打ちされた物語として厚みを増していった。ここで描かれたのは、敵味方の境界線を越えて浮かび上がる悲哀であり、その経験がオカルンとジジを恋敵から唯一無二の友に変えていったようだ。

 映像表現においても、第2期は大きな飛躍を遂げた。サイエンスSARUによるアニメーションは、原作の躍動感を超えて映像ならではの衝撃を数々生み出してきた。宇宙怪獣との戦いでは、街を破壊するシーンにスローモーションを多用し、まるで怪獣映画を思わせるスケールを実現。光学迷彩が解けて怪獣の姿が露わになる瞬間や、緻密に計算されたカメラワークは、原作の強度をさらに高める仕掛けとして機能した。加えて、金太にまつわるアニオリ描写は、物語を補強するどころか今後への布石として巧みに組み込まれており、原作を壊さずに広げるという高い次元の仕事ぶりが光った。

 その金太の登場は、物語に意外な深みを与えた。当初は“モテたい”とオカルンに助言を求める冴えないクラスメイトとして描かれたが、やがて宇宙怪獣との戦いの中で仲間の1人として存在感を増していく。彼の目線は、超常の中にいるオカルンやモモを“普通の高校生”として照らし返し、作品全体を青春群像劇へと押し広げる役割を果たした。青春は恋愛だけではない。仲間とのぶつかり合いや支え合いの中で形づくられるのだと、第2期の金太は証明してみせたと言うのは大げさだろうか。それでも異能バトルに彩られた『ダンダダン』を、より普遍的な青春の物語として観るための確かな手がかりとなったことはずだ。

 第2期第11話で描かれたクライマックスの宇宙怪獣戦は、その集大成である。モモの念動力、オカルンの呪いの力、アイラの髪、ジジの邪視、それぞれの能力が連携し、仲間たちがひとつのリズムで動き出す。怪獣を倒すためのロボットは、想像するようなかっこいいものではなかったが、バラバラだった存在が“チーム”として覚醒する瞬間には胸が熱くなった。

 この先は原作と同じく宇宙怪獣の中から現れる少女・バモラが、物語を大きく揺さぶる存在となる。強い者と結婚するという独自の価値観を持つ彼女がオカルンにキスをする衝撃の場面は、モモやアイラとの三角関係を一気に新しい段階へと押し広げていくだけに、今後の展開が楽しみだ。

 『ダンダダン』の核心は、どれほど荒唐無稽な怪異や宇宙的スケールの戦いが描かれても、根底に“青春”があることだ。モモとオカルンの不器用な恋、ジジやアイラとの絆、金太が示した仲間としての覚醒。すべてが交差して、笑い合い、ぶつかり合い、ときに涙を流す。そうした感情のきらめきが、怪奇とバトルに満ちた世界を生き生きとした青春劇へと昇華させている。

 第2期は、その青春の輪郭をさらにくっきりと描き出したシーズンだった。邪視との戦いで見えた心の痛み、宇宙怪獣との総力戦で示された仲間の強さ、そして日常に息づく小さな恋のときめきが次なる物語への期待を大きく膨らませた。第2期も終わりを迎えて、私たちの胸に残るのは、ただ迫力ある戦闘の記憶だけではない。不器用で愛おしい青春の軌跡が、まだ途中であるという確信だ。第3期では、バモラの登場をきっかけに、恋も友情もさらに複雑に、そして豊かに展開していくだろう。

■放送・配信情報
TVアニメ『ダンダダン』
第1期:各配信サイトにて全話順次配信中
第2期:MBS/TBS系スーパーアニメイズム TURBO枠にて、毎週木曜0:26〜全国同時放送
キャスト:若山詩音(モモ/綾瀬桃)、花江夏樹(オカルン/高倉健)、水樹奈々(星子)、佐倉綾音(アイラ/白鳥愛羅)、石川界人(ジジ/円城寺仁)、田中真弓(ターボババア)、中井和哉(セルポ星人)、大友龍三郎(フラットウッズモンスター)、井上喜久子(アクロバティックさらさら)、関智一(ドーバーデーモン)、杉田智和(太郎)、平野文(花)、磯辺万沙子(鬼頭ナキ)、田村睦心(邪視)
原作:龍幸伸(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:山代風我
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:恩田尚之
宇宙人・妖怪デザイン:亀田祥倫
アニメーション制作:サイエンスSARU
第1期オープニングテーマ:Creepy Nuts「オトノケ」
第1期エンディングテーマ:ずっと真夜中でいいのに。「TAIDADA」
公式サイト:https://anime-dandadan.com/
公式X(旧Twitter):@anime_dandadan

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