『チェンソーマン レゼ篇』鑑賞前に押さえておくべきポイント 𠮷原達矢監督の演出を読む

『チェンソーマン レゼ篇』𠮷原達矢の演出

 TVアニメ版と総集篇の相違点は、ほかにもまだまだある。TVアニメ版は実写映画を思わせる客観的なリアリズム路線と言われていたが、総集篇では若干マンガ・アニメ的な演出が増えている印象だ。

 TVアニメ版の第3話、コウモリの悪魔との戦いでは、デンジが「まだひと揉みもしてねーんだよ!」と叫ぶ姿を引きのカットで捉えるシーンがあった。総集篇ではこのカットがなくなっており、接写が連続したまま迫力あるバトルが描かれている。

“Chainsaw Man – The Movie: Reze Arc” - Main Trailer/劇場版『チェンソーマン レゼ篇』本予告

 さらにTVアニメ版のラストバトルにあたるサムライソードとの戦闘中には、オープニング主題歌の米津玄師「KICK BACK」がBGMとして流れるという王道のアニメ的演出が導入されている。

 そして13年前に銃の悪魔が現れた際の様子を描写する場面。TVアニメ版ではマキマのナレーションで「大体5分で120万人弱を殺した後、銃の悪魔は今日まで姿を消している」と説明されているが、原作では元々「日本に26秒上陸 5万7912人死亡」といった世界各国の被害状況が数字で列挙されていく表現が用いられていた。

『チェンソーマン 総集篇』©藤本タツキ/集英社・MAPPA

 総集篇では、この原作の表現を踏襲。画面上に大きなテロップが次々と表示される形となり、銃の悪魔の凶悪さが体感的に分かりやすい表現に変わっている。

 また、アキと未来の悪魔が契約を交わすシーンに関しても描写が変化。TVアニメ版の未来の悪魔がひょうきんな口調で「未来最高!」と連呼していたのに対して、総集篇ではひたすらにハイテンションな口ぶりになっている。コミカルな雰囲気ではあるが、こちらのほうがより原作に近いフィーリングと言えるだろう。

『チェンソーマン レゼ篇』©2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト ©藤本タツキ/集英社

 こうした総集篇の演出方針からして、𠮷原監督による『チェンソーマン レゼ篇』は原作の勢いやコミカルさを重視した作品になるのではないだろうか。そもそも原作のレゼ編はド派手なアクションシーンや、ミステリアスな女性・レゼとのロマンスが見どころとなっている。“静と動”のギャップが激しく、テンションが乱高下するため、総集篇のようなメリハリが効いた演出がマッチしそうだ。

 作中屈指の人気エピソードを𠮷原監督がいかにアニメ化してみせるのか、期待せざるを得ない。

■公開情報
『チェンソーマン レゼ篇』
9月19日(金)公開
キャスト:戸谷菊之介(デンジ)、井澤詩織(ポチタ)、楠木ともり(マキマ)、坂田将吾(マキマ)、ファイルーズあい(パワー)、高橋花林(東山コベニ)、花江夏樹(ビーム)、内田夕夜(暴力の魔人)、内田真礼(天使の悪魔)、高橋英則(副隊長)、赤羽根健治(野茂)、乃村健次(謎の男)、喜多村英梨(台風の悪魔)、上田麗奈(レゼ)
原作:藤本タツキ『チェンソーマン』(集英社『少年ジャンプ+』連載)
監督:𠮷原達矢
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:杉山和隆
副監督:中園真登
サブキャラクターデザイン:山﨑爽太/駿
メインアニメーター:庄一
アクションディレクター:重次創太
悪魔デザイン:松浦力/押山清高
衣装デザイン:山本彩
美術監督:竹田悠介
色彩設計:中野尚美
カラースクリプト:りく
3DCG ディレクター:渡辺大貴、玉井真広
撮影監督:伊藤哲平
編集:吉武将人
音楽:牛尾憲輔
配給:東宝
制作:MAPPA
主題歌:米津玄師「IRIS OUT」(Sony Music Labels Inc.)
エンディングテーマ:米津玄師、宇多田ヒカル「JANE DOE」(Sony Music Labels Inc.)
©2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト ©藤本タツキ/集英社
公式サイト:https://chainsawman.dog/
公式X(旧Twitter):@CHAINSAWMAN_PR

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