『鬼滅の刃 無限城編』北米で日本映画史上No.1ヒット 「世界規模のブロックバスター大作」に

『鬼滅の刃 無限城編』北米で日本映画史上1位

 観客の男女比は男性57%・女性43%で、年代別では18歳~34歳が最も多かった。Z世代の心をつかみ、男性中心の客層、そしてIMAXを含むプレミアムラージフォーマット上映も好調という傾向は、アニメーション映画よりもかつてのスーパーヒーロー映画のそれに近い。

 マーベルやDCといった既存IPが以前の勢いを失いつつある今、人気IPの世代交代が進んでいるという見方もできそうだが、それは本作1本だけでは見通しを立てられない。むしろ、本作の興行傾向がスーパーヒーロー映画に近いとするならば、同じように公開2週目での急落が起きるかどうかが直近の問題だ。

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 ちなみに興味深いのは、北米でも観客の半数以上が日本語音声の英語字幕版を鑑賞したところ。先述のように英語版にはチャニング・テイタムが参加したが、そうした効果よりも「オリジナルの声で観たい」という需要が高かったのだ。Netflix屈指の人気作『KPOPガールズ!デーモン・ハンターズ』は英語作品だったが、どちらもアジアローカルな想像力とクリエイティブが大きな注目を集めた例として数えられる。そういえば『鬼滅の刃』は英題が「Demon Slayer」だから、どちらも「デーモン」つながりではないか。

 本作の予想以上の成功により、北米市場全体の週末興収は1億4500万ドルと報じられている。これは『ビートルジュース ビートルジュース』が公開2週目を迎えた前年と比較しても50%の増加だ。

 第2位『死霊館 最後の儀式』は『鬼滅の刃』と若年層の集客を争ったせいか、残念ながら前週比マイナス68.9%という急落で、週末興収は2610万ドル。ただしオープニング成績が8400万ドルと予想外の好記録だったぶん、北米興収は1億3105万ドルとなっている。

『死霊館 最後の儀式』©2025 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

 サマーシーズン直後の9月は、当初はレオナルド・ディカプリオ主演『ワン・バトル・アフター・アナザー』が最大の注目作とみられていた。ところが『鬼滅の刃』と『死霊館』のWヒットにより、今月の北米市場は思わぬ好況となっている。こうした流れは『ワン・バトル・アフター・アナザー』にも実りをもたらすことになるだろう。

『ワン・バトル・アフター・アナザー』©2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.

 そのほか今週は、ドラマ『ダウントン・アビー』シリーズの完結編『Downton Abbey: The Grand Finale (原題)』が第3位に、スティーヴン・キング原作映画『The Long Walk(原題)』が第4位に、カルト的人気のロック映画『スパイナル・タップ』(1984年)の続編『Spinal Tap II: The End Continues(原題)』がランクインしたが、いずれも興行収入としては控えめだった。

 第5位には『トイ・ストーリー』公開30周年記念上映、第10位には『サウンド・オブ・ミュージック』公開60周年記念上映がランクインし、第7位の『ハミルトン』特別上映も含めると再リリース作品が活況だ。もっともこうした傾向は、サマーシーズン後の9月としては驚くべきものではない。

 『鬼滅の刃』と『死霊館』のイレギュラー的なヒットは、北米興行トレンドのいかなる変化を示唆しているのか、単発的な事象ではなく継続性があるものなのか。既存IPの動きも含めた大きな地殻変動が起きている(あるいは起こりそうな)気配もあるが、果たして。

北米映画興行ランキング(9月12日~9月14日)

1.『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』(初登場)
7000万ドル/3315館/累計7000万ドル/1週/ソニー

2.『死霊館 最後の儀式』(↓前週1位)
2610万ドル(-68.9%)/3802館/累計1億3105万ドル/2週/ワーナー

3.『Downton Abbey: The Grand Finale(原題)』(初登場)
1810万ドル/3802館/累計1810万ドル/1週/Focus Features

4.『The Long Walk(原題)』(初登場)
1150万ドル/2845館/累計1150万ドル/1週/ライオンズゲート

5.『トイ・ストーリー』30周年記念上映(初登場)
350万ドル/2375館/累計250万ドル/1週/ディズニー

6.『Weapons(原題)』(↓前週3位)
272万ドル(-47.9%)/2310館(-974館)/累計1億4745万ドル/6週/ワーナー

7.『ハミルトン』(↓前週2位)
220万ドル(-78.2%)/1850館(+25館)/累計1495万ドル/2週/ディズニー

8.『シャッフル・フライデー』(↓前週4位)
210万ドル(-45.5%)/2460館(-665館)/累計9109万ドル/6週/ディズニー

9.『Spinal Tap II: The End Continues(原題)』(初登場)
167万ドル/1920館/累計1920万ドル/1週/Bleeker Street Media

10.『サウンド・オブ・ミュージック』60周年記念上映(初登場)
148万ドル/1178館/累計148万ドル/1週/Fathom Events

(※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年9月15日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります)

参照
https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W037/
https://variety.com/2025/film/news/box-office-demon-slayer-infinity-castle-anime-record-opening-1236517827/
https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/demon-slayer-infinity-castle-record-box-office-opening-1236370035/
https://deadline.com/2025/09/box-office-demon-slayer-infinity-castle-conjuring-long-walk-1236529652/
https://deadline.com/2025/09/demon-slayer-conjuring-downton-abbey-finale-box-office-1236531270/

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』
全国公開中
キャスト:花江夏樹(竈門炭治郎役)、鬼頭明里(竈門禰󠄀豆子役)、下野紘(我妻善逸役)、松岡禎丞(嘴平伊之助役)、上田麗奈(栗花落カナヲ役)、岡本信彦(不死川玄弥役)、櫻井孝宏(冨岡義勇役)、小西克幸(宇髄天元役)、河西健吾(時透無一郎役)、早見沙織(胡蝶しのぶ役)、花澤香菜(甘露寺蜜璃役)、鈴村健一(伊黒小芭内役)、関智一(不死川実弥役)、杉田智和(悲鳴嶼行冥役)、石田彰(猗窩座役)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:矢中勝、樺澤侑里
美術監修:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:Aimer「太陽が昇らない世界」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)・LiSA「残酷な夜に輝け」 (SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
総監督:近藤光
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
IMAX® is a registered trademark of IMAX Corporation.
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公式サイト:https://kimetsu.com/anime/mugenjyohen_movie/
公式X(旧Twitter):@kimetsu_off

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