水上恒司の澄んだ瞳は何度でも観たくなる 『九龍ジェネリックロマンス』で放つ大人の色気

俳優・水上恒司の快進撃が続いている。
8月29日から『九龍ジェネリックロマンス』、10月3日から山下美月×宮舘涼太(Snow Man)らと共演することで話題になった『火喰鳥を、喰う』、12月公開予定の『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』など、いずれの作品も主演を務めている水上恒司。
水上の演技に初めて触れたのは、火曜ドラマ『中学聖日記』(TBS系/当時・岡田健史)の黒岩だ。凛々しい眉と、濁りのなく澄んだ瞳、精悍な顔つきを見るなり「将来、とんでもなく売れる役者になるだろう」と予想していた。そしてその予想は、見事に的中する。
『中学聖日記』ラストシーンに込められた“人生の奇跡” 有村架純と岡田健史の再会が意味するもの
「一見普通っぽい聖ちゃんがそんな情熱抱えてたなんて。面白いし、そんな自分楽しまないと損よ。普通ぶって世間の顔色窺いながら本当の自…主演を張る役者は、魅力的で、不思議と惹きつけられる魅力を放つ。それだけではない。他の作品では、どんな顔を見せているのだろうか。彼の姿を一目観るなり、その真っ直ぐな瞳を「もう一度、拝みたい」と思うようになった。
なぜ水上は、観る人を虜にしてしまうのか。水上の最新作『九龍ジェネリックロマンス』の紹介とともに、作品で見せた彼の演技や、魅力について触れていく。

映画『九龍ジェネリックロマンス』は、アニメ化も話題となった眉月じゅん作の人気コミックを実写化した作品だ。水上は、九龍城砦(くーろんじょうさい)の不動産屋で働く鯨井令子(吉岡里帆)が気になる男・先輩社員の工藤発を演じている。
工藤は、タイムカードの前で「どけぇぇ!」と叫びながら割り込んでくるかと思えば、「鼻毛出てるよ」と令子に平然と言い放つなど、一風変わった上司だ。令子が職場で「工藤さん」と呼べば、「んあ?」と気だるげに返すこともある。それにしても、水上が演じると荒い仕草さえも、男の抱える哀愁や色気に映ってしまうから不思議だ。
工藤は、誰にも明かせない過去を抱えている。令子の問いかけに対し、沈黙で返すこともあるが、時には動揺を覗かせるシーンも。たとえば令子の「懐かしいって、恋に似ている」という言葉に対し、工藤は目を丸くし、それからじっと彼女を凝視する。工藤のまっすぐな目線からは、彼が「何かを隠している(それが、令子に関するもの)」ことが伝わる。
工藤の目線は、鋭い時もあるが、基本的に優しい。とくに、令子の腕を掴み、眉をひそめながら覗き込むシーンの工藤は、艶っぽくて思わず見入ってしまう。その優しい目線は、他の人には向けられず、令子だけに向けられていることが、ストーリーを追うごとに判明していく。
ただ、工藤の瞳が見つめる先は、令子の遥か先ともいうべきか。まるで、令子の「後ろ」にいる誰かを見ているかのようにも見える。その目線は、目の前の令子なのか、それとも他の「誰か」なのか。その謎は、物語が進むにつれて少しずつ明かされていく。
工藤の「優しい眼差し」は、ストーリーの後半に向けて、少しずつ目の前にいる令子に向けられていく。目線が「奥」から「手前」に落とされていくともいうべきか。その演技の使い分けが、実に見事だった。
工藤は、素直になれない分、語る代わりに「見つめる」ことで気持ちを伝えていく。過去の記憶と、そして今目の前にいる女性に向けて……。ネタバレになるため詳細は控えるが、本作ではそんな水上の「目線の落とし方」が、ストーリーの展開に説得力を持たせていく。

本作に登場する工藤の魅力は、不器用な一途さとも言える。作品の中で、印象的だったのは、工藤が令子の手を引いて「教えてやるよ。この街のなつかしさってやつ」と言いながら九龍の街を歩くシーンだ。
強引にも見える工藤からの誘いに、令子は戸惑いながらも微笑んでついていく。一歩間違えると、キザになりかねない場面だが、水上が演じると自然体に見えてしまう。
水上はどんな強引な展開でさえも、自然体でさらりと演じられる稀有な役者だ。過去に、水上の演技を観てそう感じたのは、ドラマ『真夏のシンデレラ』(フジテレビ系)の時である。ドラマの中で、水上はライフセーバーとして働く早川宗佑を好演。ドラマでは、海で助けた女性に一目惚れするという役どころを演じていた。





















