當真あみが“主人公”に覚醒へ 『ちはやふる』が透明化しない“強き者”が背負う重圧と葛藤

8月27日に放送された『ちはやふる-めぐり-』第8話は終盤戦の幕開け。いよいよ始まった東京都予選で、いきなり瑞沢と当たってしまう梅園かるた部。めぐる(當真あみ)の相手は折江(藤原大祐)。1年前に奏(上白石萌音)に呼ばれ、バイト着のまま初めてかるたを取った場所で、その時と同じ相手とふたたび向かい合う。しかし、この1年でかるたに打ち込み、仲間ができ、青春を懸けてきためぐるは、1年前とはまるで別人だ。
マネージャーに徹することにした草太(山時聡真)は梅園の試合を見ながら、顧問の島(波岡一喜)にチームメイトの強みを語っていく。八雲(坂元愛登)は総合力の高さ、春馬(高村佳偉人)は奏との読みの練習で培った“感じ”の良さ、風希(齋藤潤)はボクシングで鍛えられたスピードと反射神経。千江莉(嵐莉菜)は思い切りの良さ。そしてめぐるは、効率重視の性格を生かした正確で無駄のないかるた。

その省エネかるたには、さらに大きなメリットがあると見える。無駄を削ぎ落とした分で生まれる余裕で、周囲を見ることができる団体戦向きの強み。そしてもうひとつは、その余裕の部分に全力を注ぎ込むことで、試合中に一気に覚醒できること。前者は瑞沢との試合中に八雲の異変に気付き声をかけることに、後者は数枚遅れで臨んだ次の試合で一気に形勢を逆転させることへと発揮されている。第1話では自身を“脇役”だと捉えていためぐるだが、すっかり“主人公”へと成長しているではないか。

一方で、梅園唯一のA級選手であるために“勝つ”ことを前提に作戦が組まれ、その重圧に押しつぶされそうになる八雲が今回のエピソードのキーパーソンだ。手を痛めていた風希と試合中に接触し、彼が棄権したことでさらなるパニックに陥り束負け。次の試合を前に、会場から姿を消してしまうのである。今作におけるめぐるであったり、原作や映画版における千早(広瀬すず)であったり、初心者が努力を重ねて着実に実力を備え、強い相手と対峙していくのはスポコン作品の王道。しかし、そのような場合で往々にして見落とされがちなのは、今回の八雲のように強き者が背負う重圧と葛藤の部分である。
原作の時点から『ちはやふる』は、その重圧を透明化せずに真摯に向き合ってきた作品である。周防久志であったり若宮詩暢であったり、北央という看板を背負う須藤暁人であったり、もちろん新も然り。祖父の死をきっかけにかるたから離れようとした新は、苦しみを抱えながらも、仲間の後押しもあって復活を遂げた。そしてこのドラマ版でも前回明らかになったように、名人の座まで上り詰める。強き者が葛藤を超えてさらに強くなるドラマがあるからこそ、それを追いかける側のドラマにも深みが出てくるものだ。

さて、試合を棄権した風希は病院へと向かうわけだが、もうその時点で真島太一(野村周平)の登場が確約(最初は後ろ姿からであるが)される。終盤、右手を使うことにドクターストップがかかった風希は、左手でかるたを取る特訓をするため、左利きのめぐるを呼び出す。そこでめぐるは太一と対面を果たす。すると風希は、太一が現在の準名人であると紹介する。つまり千早が現クイーンで、新(新田真剣佑)が名人で、太一が準名人。あの3人がかるた界のトップランカーを独占している世界線を我々はずっと観ていたのか。

なにはともあれ、太一が風希の師匠的なポジションとなるなかで、ライバルである折江は新のもとを訪ねる。それはあたかも太一と新の関係が、風希と折江に引き継がれていくかのようだ。次回の第9話では千早をはじめとした瑞沢のOBが勢ぞろいし、梅園と瑞沢、北央とアドレの4校で東京の第二代表の残り一席をめぐる対決が繰り広げられる。これはなんと贅沢な終盤戦だろう。
2016年から2018年にかけて公開された映画『ちはやふる』シリーズの10年後の世界を舞台にした作品。廃部の危機にある梅園高校・競技かるた部の藍沢めぐるが、顧問として赴任してきた大江奏と出会い、成長していく。
■放送情報
『ちはやふる-めぐり-』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:當真あみ、原菜乃華、齋藤潤、藤原大祐、山時聡真、大西利空、嵐莉菜、坂元愛登、高村佳偉人、橘優輝、石川雷蔵、瀬戸琴楓、髙橋佑大朗、藤枝喜輝、大友一生、漆山拓実、上白石萌音、内田有紀、要潤、榎本司、富田靖子、高橋努、波岡一喜、髙嶋政宏
ショーランナー:小泉徳宏
監督:藤田直哉、本田大介、松本千晶、吉田和弘
脚本:モノガタリラボ(小坂志宝、本田大介、松本千晶)、金子鈴幸
プロデューサー:榊原真由子、巣立恭平、中村薫、平田光一
企画・プロデューサー:北島直明
チーフプロデューサー:松本京子
音楽:横山克
主題歌:Perfume「巡ループ」(UNIVERSAL MUSIC LLC)
制作協力:ROBOT、ウインズモーメント
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/chihayafuru-meguri/
公式X(旧Twitter):https://x.com/chihaya_koshiki
























